VIPのニーズに応え続けるサンシティグループが和歌山にこだわる理由

大谷イビサ(JaIR編集部)

 和歌山県のIRプロジェクトで参加資格審査をクリアしたサンシティグループ。VIP向けサービスからスタートし、総合エンターテインメント企業としてアジア圏を中心に成長を遂げてきたサンシティグループのIR戦略と一貫して和歌山にこだわる理由についてサンシティグループホールディングスジャパンの大越信幸氏に聞いた。
IR2.0を提唱するサンシティの和歌山IRのパース

映画も作り、イベントも興行するサンシティグループの多角化とIR


 マカオのカジノにおけるVIPサービスで知られるサンシティグループだが、「総合エンターテインメント企業」を指向し、関連企業は200社以上に上るという。不動産開発や賃貸、ホテルやIRのコンサルティング、旅行サービスなどのほか、イベント興業、レストラン経営、映画制作まで幅広い。「ホテル経営やIT分野にも長けているし、エンターテインメントに関しては造詣も深い。経営委託や丸投げしているのではなく、その先のオペレーションまで指向しています。VIPの方々が楽しんでいただけるエンターテインメントを追求した結果、ここまで事業領域が幅広くなったと考えています」(大越氏)。

 VIPのニーズに応えた事業の多角化からIRに行き着くのは必然的な結果だろう。IRに関しては、地元パートナー企業と提携し、ベトナム、フィリピン、ロシア、韓国などで開発を進めている(関連記事:「和歌山IRに名乗りを上げるサンシティグループのアジア戦略(https://jair.report/article/306/)」)。IRで必要なサービスをすべて自前で運営できる資金とノウハウはあるが、事業の安定や地元との連携を考え、各地域でベストなやり方をとっているという。

 和歌山のプロジェクトでもパートナーを探している途中だ。「資金力はあるし、やりきる自信もありますが、すべて自前でやりたいというわけではありません。日本企業がプロジェクトに参画することでさらに良くなることも多いですし、事業の安定運営をきちんと表明するためにも日本企業に資本参加をお願いしたいと考えています」(大越氏)。

 とはいえ、和歌山県のIR事業者公募のスケジュールはRFPの締切が新型コロナウイルスの影響で2ヶ月後ろ倒しになっている。当然、感染症対策も前提とした提案も重要になる。これに対してサンシティグループは、テクノロジーによる対応を進めていくことを検討中だという。「現状、感染症対策は決定打がない。その時々に応じ、スマートシティやIoTなど最新のテクノロジーを用いるなどして対応していきたいと考えている」という。


新しいIRのチャレンジのために成長するポテンシャルが和歌山にはある


 サンシティグループが一貫して和歌山にこだわるのは、大阪や横浜のような大都市とは違う魅力があるからだという。大越氏は「素晴らしい自然や歴史遺産、豊かな文化、食など、さまざまな面でユニークな特徴を持っています。われわれは『IR2.0』と呼んでいますが、ラスベガスやマカオのようなネオンが輝くような従来型のカジノとは異なった和歌山の自然と融合したリゾート型のIRを作っていきたいと考えています」と語る。
IR2.0を提唱するサンシティの和歌山IRのパース

 和歌山を選んだ背景は、サンシティグループが集客の強みを持つ「VIP層の嗜好」もある。「お客様は、大都市のみならず、和歌山のような自然豊かで、食やリゾート気分を楽しめるところに行きたいと考えています」(大越氏)とのことで、大阪や横浜のような大都市より、むしろ和歌山の方が顧客の嗜好に合うという。

 また、すでに都市としてできあがったマカオやラスベガスの発展の歴史を紐解いてみても、これから発展の余地のある和歌山の方がよいという。大越氏は「エンターテインメントやリゾートという観点で、新しいIRにチャレンジするには、開発の余地があり、環境負荷の低いところのほうがよい。IRを起点として、地域の皆様とともに成長するポテンシャルがあるというのが和歌山を選定した理由です」と語る。

 和歌山を選んだ別の理由としては、国際空港からの距離があるという。「日本人は東京からの距離で見てしまいがちですが、アジア圏から見たら関西国際空港に近い和歌山の方がむしろ東京より近く感じます。人口の多い関西圏も近いですし、集客や雇用という面を考えても、和歌山の方が有利と判断しました」(大越氏)。また、大阪に近いことはむしろメリットだともとらえる。「他の国をみれば、地域に1つしかIRがないほうが異例。都市型の大阪IRとリゾート型の和歌山IRで共存共栄できると考えています」と大越氏は語る。

サンシティグループ
https://suncity-japan.com/