<IR用語集・基礎知識> ロシア

JaIR編集部

ユーラシア大陸北部に位置する連邦共和制国家で、日本に「都道府県」があるように、「共和国」「州」「地方」などの83の行政区画から成る。約1,710万㎢の国土は世界一の広さを誇るが、人口は1億4,680万人(2017年・ロシア国家統計庁データ)と密度は低い。長く続く厳寒の冬が特徴で、内陸部は-50℃以下になるところもあるが、近年は温暖化の影響で、猛暑や暖冬となる年も珍しくない。経済面では少子高齢化、欧米による経済制裁、原油価格の急落といった課題が多く、近年GDP成長率は低迷している。

1991年、賭博行為がほぼ全面的に禁止だった旧ソ連体制が崩壊。経済混乱に乗じ、規制や制度が全く無いまま、国内に500以上もの小規模カジノが乱立するが、2009年には現プーチン大統領により、「賭博禁止令」が施行されることとなる。この法律は、既存の施設を一斉閉鎖し、過疎地に指定する“カジノ特区”のみに開業を認めることで、都市圏でのギャンブル依存症蔓延防止、ギャンブル関連犯罪の撲滅、地方経済の活性化を図るものである。カジノに入場できるのは18歳以上の自国民および外国人で、入場料はかからない。

当初は、プリモリエ特区(ウラジオストク)、シビルスカヤ・モネタ特区(シベリア・アルタイ地方)、ヤンタルナヤ特区(バルト海沿岸・北西部カリーニングラード州)、アゾフ・シティー特区(南部ロストフ州、クラスノダール地方)の4つだったが、2014年のソチオリンピック後に、ソチ(クリミア半島・クラスノダール地方)が新たに特区に追加。やがてクラスノダール地方でのカジノ開設は、ソチ特区に一本化される形となったため、アゾフ・シティー特区は廃止となった。

2015年、国内第1号として「ティグレ・デ・クリスタル」(プリモリエ特区)が開業。日本海に面したロシア極東の地にある同施設は、アジアの富裕層を狙い、ロシア語と英語のほか、中国語、韓国語、日本語にも対応している。同施設の運営会社であるサミット・アセント・ホールディングスの会長は、“マカオのカジノ王”と呼ばれた故スタンレー・ホーの息子で、メルコリゾーツ&エンターテインメントの会長兼CEOを務めるローレンス・ホー。しかし、2019年には、和歌山IRへの参入を狙うマカオのサンシティ・グループが筆頭株主となり、ホー氏に代わって経営権を獲得している。

プリモリエ特区はウラジオストク郊外のアルチョムという街にあり、ウラジオストク国際空港(成田国際空港から約2時間半)から車で約20分、市内からだと車で約1時間。この特区ではティグレ・デ・クリスタル以外に、2022年までに10軒以上のカジノホテル、ショッピングモール、ヨットハーバー等のリゾート開発が進む計画だ。なお、プリモリエ特区以外の地域ではここまでの開発は進んでおらず、実質はここがロシア唯一の大型IRとなっている。

(2020年8月4日更新)