【新型コロナのIRへの影響レポート】マカオ 6月30日版 (2/3)

二上葉子

オペレーターの経営状況、日々の運営費を回収できず赤字が続く

 各社の経営状況に関して、MGMチャイナは、5月27日には流動性を後押しするため、5億ドル(約537億円)のシニア債権を発行することを提案。ムーディーズ社はこの2025年満期の無担保シニア債権に対し「 Ba3 」の格付けを付与したと発表した。また、6月11日のレポートで「4月の営業費用は収益の2倍」だったとし、厳しい状態が続く。

 ウィン・マカオは、4月、5月の各日に約2億円のEBITDAを損失。6月15日には、7億5,000万米ドル(約805億円)の無担保債務を発行することを発表した。
 
 サンズ・チャイナは、4月の純損失は1億8,000万ドル(約194億)で、第1四半期全体では1億6,600万ドル(約178億)を超えた、とコメント(1Qにはパンデミック前の数字を含む)。同社は、利息、税金、減価償却費、償却前調整後利益(EBITDA)に1億500万ドル(約114億)の損失を計上した。同月の収益は900万ドル(約10億円)で、前年同期比98.7%減の1億8000万ドルの損失を計上。

 続く5月も収益が減少。マカオの金融不況が深刻化したので、証券取引委員会(SEC)への報告が促され、「現在の運営環境で先1年間の運営資金を調達するのに、強固なバランスシートと十分な流動性を確保していると考えている 」と報告した。同社スポークスマンは 「同社は、コスト削減プログラムをはじめとし、必要不可欠以外のキャッシュフローの流出を最小限に抑え、現環境を乗り切るための様々な緩和策を講じてきた」とコメントした。

 メルコ・リゾーツは第一四半期でマカオGGRシェアを獲得した。バーンスタイン社のレポートによると、コロナの影響を受けなかった時期を含むが「メルコがVIPとマスの両方でシェアを獲得したと推定」している。

 ギャラクシー・グループは6月10日、ルイ会長が香港メディアに対して、「グループの現在のマカオでの毎日の運営費は約280万ドル(約3億円)である」とコメントし、「同社の財務力に耐えられると確信している」と述べた。マカオで「大規模」改修工事を継続中で、旗艦のコタイにあるギャラクシー・マカオのフェーズ3、及びフェーズ4の工事を続けていると会長は付け加えた。アナリストはフェーズ3の開業は、おそらく2021年半ばになると見立てている。

 また、マカオ最大のジャンケット事業者サンシティは、今年2月から5月、4ヶ月の赤字を報告。
アルヴィン‧チャウ会長は、同グループの「株主は2020年2月から5月までに計上された損失を免除され、6月には株式を取り崩した株主を除き、通常の計算が再開される」と指摘。私有企業のため、「株主」は「会社の運営の日々の決定に参加しない受動的な投資家」を意味すると説明した。

 

マカオ自国民向け観光キャンペーン開始、非ゲーミング施設も対象に

 マカオ政府は、現地住民を対象とした「マカオReady Go! 現地ツアー」として、支援に2億8,000万マカオパタカ(約38億円)以上を投じることを発表。6月17日から申込みが始まっている。「レジャー」ツアーのカテゴリーには、各オペレーターの非ゲーミングエリアへ立ち寄る内容も含まれる。マカオ住民は、承認されたツアーに参加するごとに280マカオパタカを最大2回まで、合計560マカオパタカ(約8,000円)の政府補助金を受けることが可能。ツアーは6月22日から9月30日の間に実施される予定である。申込状況だが、初回申込者の6割がIRを訪れるコースを選択した、と観光事業のオフィスの政府関係者がコメントしている。

 IRの非ゲーミング施設に関しては、6月15日、チームラボによるデジタルアート施設「チームラボ・スーパーナチュラル・マカオ」がサンズ・チャイナ運営IR「ヴェネチアン」にて部分開業した。5,000平方メートルを超える迷路のようなフロアスペースと8メートルの天井高を持つこのミュージアムでは、マカオでのみ初公開となるインスタレーションや最先端デジタルアート作品が常設展示される。新型コロナの影響がなければ、当初2020年2月にオープンする予定だった。サンズ・チャイナによると、非ゲームアトラクションへの最大規模の投資の1つであるという。

 一方、メルコリゾーツ&エンターテイメントは、6月18日、「シティ・オブ・ドリームス・コタイ」の敷地内にある「ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」のショーを、来年1月まで休止すると発表した。こちらの決定は新型コロナの影響ではなく、クリエイターのフランコ・ドラゴーン氏がコンテンツのデザインを一新するためとしている。同ショーは、2010年9月に初演され、通算600万人以上の観客を迎えてきた。メルコのマカオリゾート最高執行責任者デビッド・シスク氏は「新しいプロダクションは旧正月に合わせて『(2021年)1月中旬』にデビューする」とコメントした。

サンズ・チャイナが運営する「ヴェネチアン」