東京都知事選挙は6月18日に公示され、史上最多の22人が立候補した。投票日は7月5日で、大きな争点としては1年延期になった東京オリンピック・パラリンピックの是非があるわけだが、隠れた争点としては、統合型リゾート(IR)を東京に誘致するか否かも将来の東京像を占うテーマとなっている。
また、2018年に「東京ベイアリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」を設置し、3回のワーキンググループを経て、昨年10月に最終提案「東京ベイエリアTowards2040 11カラーズ;未来創造域のデザイン」を提出している。この中で、11の提案のうち4番目が「MICE、IR、トランジットツーリズム」で、「世界に向けて『ここにしかない』ベイエリアツーリズムを展開する」として、イメージパースとともに、「東京の国際競争力強化『稼ぐ東京』のためにMICE、IR施設を整備して、国内外から人を集める」と謳っている。港湾局はさらに、昨年10月31日、IRやMICEとは書かれていないものの、「青海地区のまちづくりに向けた民間事業者からの事業提案」の募集(サウンデング調査)の実施を発表、今年の1~2月に対面式で聞き取りを行っている。
東京都は元々、IR整備法が立ち上がる前からIRの先頭バッターだった。1999年には、東京都知事に初当選した石原慎太郎氏が「お台場カジノ構想」をぶち上げ、模擬カジノを実施したのは記憶に残っている。その後も2013年、安倍内閣の産業競争会議国家戦略特区ワーキンググループが「東京臨海副都心における国際観光拠点の整備」のヒアリングを実施。この提案者には国内の有力企業が名前を連ねてIRを提案しており、この段階では明らかに全国でも突出した取り組みだった。しかし、当時の知事である猪瀬直樹氏、次の舛添要一氏が続けて失脚したことにより、IR構想は「検討」課題になり、今に至る。
今回の選挙に小池百合子氏が選ばれれば、かなり安定した都政運営が可能になり、従来、「検討」で先延ばししてきたIR案件を、国の施策の新型コロナウイルスの影響による遅れもあり、後出しじゃんけんの強みで打ち出せる条件はそろってきていると言えるかもしれない。
【反対】宇都宮健児氏(73歳 元日本弁護士連合会会長。立憲民主党、共産党、社民党が支援)
もっとも熱心にIRについて語っているのは宇都宮氏。小池知事の「稼ぐ都政」批判の軸にIR批判を持ってきており、しんぶん赤旗のインタビューでも多重債務問題の再燃危険性に触れ、人の不幸の上に立つ経済成長を考えることは道徳的・倫理的な堕落と主張している。「カジノがなくても外国人観光客は新型コロナが拡大するまでは増えていた」と指摘、「日本の文化や伝統、自然環境」が十分魅力になる、という。22日にはIRの予定地である江東区の青海を訪れ、ゆりかもめの東京国際ターミナル駅から予定地を眺めながら、「カジノは賭博で何もないところをスラム化させる」と熱弁。今年3月に改称された駅名もIR推進の意図があると持論をふるった。
【反対】山本太郎氏(45歳 れいわ新選組代表)
IRには一貫して反対の立場。17日に開催されたオンラインの共同記者会見では、誰かから搾り取る、誰かの負けで利益を得るのがカジノの本質であるとし、日本人の金融資産を海外企業に差し上げる博打をやっていいのか、そこに税金を使うべきではないと主張している。また、ラスベガスサンズの撤退にも触れ、東京都はIRをやらないとはっきり表明すべきという。
【賛成】小野泰輔氏(46歳 元熊本県副知事。日本維新の会推薦)
大阪府・市のIRを日本維新の会の松井一郎市長や吉村洋文知事が強力に推進していることもあり、自分は推進派であると明言。カジノは都市の魅力になるとしているが、選定過程を大事にし、プロセスを透明に保つことが大事であると注文を付けている。
【賛成】立花孝志氏(52歳 NHKから国民を守る党党首)
カジノはパチンコや競馬、競輪、オートレースと違って、外国では金持ちがやっている社交場。お金がないと入場できない。お金のない人は1円と5円しか賭けられないようにする。日本の金持ちが海外に流れるのを防ぐと主張している。自身が元パチプロで専門家だから分かるという。
■関連記事
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 5月28日版
https://jair.report/article/319/
遅れつつあるスケジュールの中で、後出しじゃんけんの優位は?
現職の小池百合子東京都知事は、IRについて一貫して「メリット・デメリットを見ながら検討している」と旗幟を鮮明にしていないが「国の計画が後ろ倒しになってきていることも注視している」と指摘している。とはいえ、東京都港湾局は、2014年度~2019年度に7回もIRについての調査を実施しており、2018・2019年からは東京都に立地した場合の影響調査に踏み込んでおり、2020年度も継続している。また、2018年に「東京ベイアリアビジョン(仮称)の検討に係る官民連携チーム」を設置し、3回のワーキンググループを経て、昨年10月に最終提案「東京ベイエリアTowards2040 11カラーズ;未来創造域のデザイン」を提出している。この中で、11の提案のうち4番目が「MICE、IR、トランジットツーリズム」で、「世界に向けて『ここにしかない』ベイエリアツーリズムを展開する」として、イメージパースとともに、「東京の国際競争力強化『稼ぐ東京』のためにMICE、IR施設を整備して、国内外から人を集める」と謳っている。港湾局はさらに、昨年10月31日、IRやMICEとは書かれていないものの、「青海地区のまちづくりに向けた民間事業者からの事業提案」の募集(サウンデング調査)の実施を発表、今年の1~2月に対面式で聞き取りを行っている。
東京都は元々、IR整備法が立ち上がる前からIRの先頭バッターだった。1999年には、東京都知事に初当選した石原慎太郎氏が「お台場カジノ構想」をぶち上げ、模擬カジノを実施したのは記憶に残っている。その後も2013年、安倍内閣の産業競争会議国家戦略特区ワーキンググループが「東京臨海副都心における国際観光拠点の整備」のヒアリングを実施。この提案者には国内の有力企業が名前を連ねてIRを提案しており、この段階では明らかに全国でも突出した取り組みだった。しかし、当時の知事である猪瀬直樹氏、次の舛添要一氏が続けて失脚したことにより、IR構想は「検討」課題になり、今に至る。
今回の選挙に小池百合子氏が選ばれれば、かなり安定した都政運営が可能になり、従来、「検討」で先延ばししてきたIR案件を、国の施策の新型コロナウイルスの影響による遅れもあり、後出しじゃんけんの強みで打ち出せる条件はそろってきていると言えるかもしれない。
主要候補者はIRをどう考えているのか
小池知事以外の候補者だが、IRについて詳しく触れている候補者は多くない。明確に触れている候補者を紹介したい。【反対】宇都宮健児氏(73歳 元日本弁護士連合会会長。立憲民主党、共産党、社民党が支援)
もっとも熱心にIRについて語っているのは宇都宮氏。小池知事の「稼ぐ都政」批判の軸にIR批判を持ってきており、しんぶん赤旗のインタビューでも多重債務問題の再燃危険性に触れ、人の不幸の上に立つ経済成長を考えることは道徳的・倫理的な堕落と主張している。「カジノがなくても外国人観光客は新型コロナが拡大するまでは増えていた」と指摘、「日本の文化や伝統、自然環境」が十分魅力になる、という。22日にはIRの予定地である江東区の青海を訪れ、ゆりかもめの東京国際ターミナル駅から予定地を眺めながら、「カジノは賭博で何もないところをスラム化させる」と熱弁。今年3月に改称された駅名もIR推進の意図があると持論をふるった。
【反対】山本太郎氏(45歳 れいわ新選組代表)
IRには一貫して反対の立場。17日に開催されたオンラインの共同記者会見では、誰かから搾り取る、誰かの負けで利益を得るのがカジノの本質であるとし、日本人の金融資産を海外企業に差し上げる博打をやっていいのか、そこに税金を使うべきではないと主張している。また、ラスベガスサンズの撤退にも触れ、東京都はIRをやらないとはっきり表明すべきという。
【賛成】小野泰輔氏(46歳 元熊本県副知事。日本維新の会推薦)
大阪府・市のIRを日本維新の会の松井一郎市長や吉村洋文知事が強力に推進していることもあり、自分は推進派であると明言。カジノは都市の魅力になるとしているが、選定過程を大事にし、プロセスを透明に保つことが大事であると注文を付けている。
【賛成】立花孝志氏(52歳 NHKから国民を守る党党首)
カジノはパチンコや競馬、競輪、オートレースと違って、外国では金持ちがやっている社交場。お金がないと入場できない。お金のない人は1円と5円しか賭けられないようにする。日本の金持ちが海外に流れるのを防ぐと主張している。自身が元パチプロで専門家だから分かるという。
■関連記事
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 5月28日版
https://jair.report/article/319/