6月4日の松井一郎・大阪市長の定例記者会見にて、質疑応答部分で統合型リゾート(IR)に関する質疑があった。大阪市は記者会見の内容を終了後にテキスト化し、翌日には公開している。記者会見の記事は圧縮されており、微妙なニュアンスが伝わりきらないことがある。ここではIR関連の全文を掲載するとともに、読み取れることを精査したい。
ポイントとしては以下の8点がある(市長発言より筆者抜粋)。
①「この1年、2年という時期が経過をすればね、コロナを普通のインフルエンザとして扱えるようになると思いますので、その後は間違いなくIRという施設はエンターテイメントを中心に日本経済を支える一つのパーツ、ツールになる」
②「ただ、IR事業者、MGMさんからは、大阪でのIR実施についてはね、これは全く撤退等々は考えていないと。ただ、今、直接会っていろんな協議できないので、少し時間を延ばしてほしいというふうな連絡はいただいております」
③「オリックスさんの会社の事情等々もあるんでしょうから、それはオリックスさんが判断すればいいと思ってます」
④「大阪でパートナーを決定するためにMGMさんの基本計画を受け付けるということにしてるわけですけども、そもそも打合せができません。オンラインではできるけども、これはやっぱり1兆円の投資の話ですから、なかなかオンラインだけで全てを網羅できるという状況にもありません」
⑤「基本協定を取りまとめるのに、まず1年遅れるぐらいの話になってきてますので、全体的に1年から2年程度先送りということになるんじゃないかと、こう思ってると」
⑥記者「~あと、府市が示してる条件の地下鉄の延伸費用の一部負担なんですけど、この辺の条件については改めて見直される考えって現時点ではいかがでしょうか」
市長「いや、現時点では見直す考えはありません。とにかくコロナが普通のインフルエンザになればね、今のIRも含め、コロナ前の経済状況は十分取り戻せるわけだから、コロナで今、こういう状況になってるわけだから」
⑦記者「~提案書類の書類提出期限は7月頃を予定していましたが、ここの期限は変わらないということなんでしょうか」
市長「当面、半年は延ばさないかんでしょうね」
⑧「国の申請期間も、これはちょっと延長されるというか、国の方も今そういう検討してると思いますよ」
そこから、今年7月を予定していた事業提案書(RFP)の提出について「当面、半年は延ばさないかん」という事になり、「全体的に1年から2年程度先送り」という見方になるわけだ。全面開業については、記者からの誘導もありつつ、「そうですね。27年、28年。実際に協定書が出来上がって、事業計画書ができてね、基本設計が出来上がらないと具体的な工期がどうなるのかっていうのは、これは出せませんから」としている。このことから、既に明らかにしていた大阪・関西万博後の開業もやむなし、2026年3月(2025年度末)が、場合によっては2028年3月(2027年度末)もありうるという読みになってくる。
新型コロナウイルスについては、1~2年でワクチンが出来れば、普通のインフルエンザとして扱えるという見方をしていて、その後は従来の観光・インバウンド事業を再開するという考えだが、これからのMICEや富裕層ビジネスの見直しというところまでは、この会見では出ていない。時間が経過すれば、元に戻るという事ではなく、今回の感染症で、万博も含めて、新しいスキームの構築が必要になってくると思うのだが、そこの検証が極めて重要な課題になってくるだろう。
■JaIR関連資料DB
大阪市・令和2年6月4日、大阪市長会見全文
https://jair.report/archive/292/
■関連記事
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 5月28日版
https://jair.report/article/319/
【令和2年6月4日 大阪市長会見全文より質疑応答でのIR関連部分全文】
https://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000499032.html
司会
横田さん。
フリージャーナリスト 横田記者
フリーの横田一ですけども、カジノIR誘致についてですね、MGMと組んでるオリックスの井上社長、CEOが5月22日の決算説明会で、現時点での方針は変わらないものの、今後数か月でコロナの影響を検証、良い投資先かどうかを再検証すると発言されてるんですが、これを受けて大阪市としてですね、コロナ禍でカジノが高収益性を保ってビジネスモデルとして成り立つかどうか、IRを支えられるかどうかについて検証、調査するお考えはないんでしょうか。
市長
これは我々もコロナを普通のインフルエンザ並みにするために世界中の人たちが今、研究者がね、ワクチン、それから治療薬を開発をしている、研究開発しているわけですから、今日も新聞出てましたけども、塩野義製薬でも来年にはワクチンが作れそうだというような発表がなされてますし、大阪府、大阪市で、阪大、市大と組んで、今、ワクチン研究してるのも、7月には医療関係者に、これは非常に数少ないですけども治験を始めて、9月にはある一定の数を接種できる体制をつくるということになってますから、先程もコロナ禍でということでいうと、この1年、2年という時期が経過をすればね、コロナを普通のインフルエンザとして扱えるようになると思いますので、その後は間違いなくIRという施設はエンターテイメントを中心に日本経済を支える一つのパーツ、ツールになると思ってますので、ぜひ推進していきたいと思います。
フリージャーナリスト 横田記者
それまでの間に、カジノの大手MGMを含めてですね、経営的に厳しくなって、日本に投資する余力があるかどうか、あるいはIRをつくったはいいけども破綻してですね、撤退するみたいな事態もおそれもあると思うんですが、それについてのリサーチをしないのかどうかと。あわせて、それを含めてですね、コロナ禍におけるカジノ、本当に必要か、やるべきかどうかを住民投票にかけるべきかどうかについてお伺いしたいんですが。
市長
まず、MGMさんからは非常にコロナで厳しい、経営的には厳しい。それはもうそうですよ。MGMっていうか、そういうIR事業者のみならず世界中の観光というものを、観光を元にした産業、事業者、全てが今、世界中、苦しい状況ですから、これはIR事業者に限ったことではありません。ただ、IR事業者、MGMさんからは、大阪でのIR実施についてはね、これは全く撤退等々は考えていないと。ただ、今、直接会っていろんな協議できないので、少し時間を延ばしてほしいというふうな連絡はいただいております。やる気は十分あるんだろうと、こう思っておりますし、IRについては我々はもう何度も選挙でIRを推進すると、大阪、夢洲にIR、インバウンド、エンターテインメントの拠点をつくりたいということは何度も選挙で訴えてますし、その選挙での公約でありますから、ぜひ夢洲にIRを進めるために前進したいと思ってます。
フリージャーナリスト 横田記者
ということは、コロナ禍の中で新たに民意を問うことはしないと、住民投票はする必要がないと。
市長
ないですよ。
フリージャーナリスト 横田記者
MGMと組んでるオリックスは再検証すると言ってるんですけども、大阪市としてはそれの必要性はないというお考えと理解してよろしいんでしょうか。
市長
ええ。IRを進めていくっていうのは、これは我々、公約ですから、公約は実現をさせていきます。オリックスさんはどういう考えなのかは、やっぱりオリックスさんの会社の事情等々もあるんでしょうから、それはオリックスさんが判断すればいいと思ってますし。
司会
日経新聞さん。
日本経済新聞 髙橋記者
日本経済新聞の髙橋です。IRについてなんですけれども、一部の報道で、政府は基本方針の決定を7月以降に先送りするという話も出てますけれども、基本方針の決定が7月以降となった場合は、大阪へのIRのスケジュールへの影響についてどのように見られていらっしゃいますでしょうか。
市長
もうスケジュールには影響出てます。現に今、大阪でパートナーを決定するためにMGMさんの基本計画を受け付けるということにしてるわけですけども、そもそも打合せができません。オンラインではできるけども、これはやっぱり1兆円の投資の話ですから、なかなかオンラインだけで全てを網羅できるという状況にもありませんから、今、IR推進局から聞いてるのは、やはり半年から1年、どうしてもコロナによって予定が先送りになるという、そういう状況だと聞いてます。
司会
次の質問をお受けいたします。読売新聞さん。
読売新聞 藤本記者
読売新聞の藤本です。IRに関して先程市長が仰った半年から1年どうしてもコロナで予定が先送りになる状況と聞いているっていうのは、これは、今年の9月頃とされている設置運営事業予定者の選定の話なのか、それとも全面開業時期についての話なのか、この辺はいかがでしょうか。
市長
いや、だから、それが遅れるということは開業時期も遅れますよ。本来であれば、今年の4月にはもう事業者と協議をスタートさせて、基本協定書が秋にはできる予定で考えてたわけですよ。来年の21年の1月から7月の間に国がエリア指定するという、そういう予定だったのが、今、全く基本協定を結ぶ協議が整っておりませんから。この状況の中においては基本協定を取りまとめるのに、まず1年遅れるぐらいの話になってきてますので、全体的に1年から2年程度先送りということになるんじゃないかと、こう思ってると。
読売新聞 藤本記者
それに合わせて全面開業の時期も従来よりもさらに遅れるということは致し方ないというようなお考えですか。
市長
だから、我々はコロナ前はね、2025年の万博前開業というものをめざしてずっとやってきたわけですけど、完全に万博には間に合わないと。万博後開業になります。
読売新聞 藤本記者
あと、府市が示してる条件の地下鉄の延伸費用の一部負担なんですけど、この辺の条件については改めて見直される考えって現時点ではいかがでしょうか。
市長
いや、現時点では見直す考えはありません。とにかくコロナが普通のインフルエンザになればね、今のIRも含め、コロナ前の経済状況は十分取り戻せるわけだから、コロナで今、こういう状況になってるわけだから。
司会
ほか、質問ございますか。日刊工業さん。
日刊工業新聞 大川記者
日刊工業新聞、大川です。今の質問の確認なんですけれども、27年3月までの全面開業という指定については変えないということでよろしいですか。
市長
27年。
日刊工業新聞 大川記者
はい。26年度末までの全面開業としていたと思うんですけども、そのスケジュールについては変えないということでしょうか。
市長
いや、だから、そこも先延ばしになります。今、これだけ遅れれば。
日刊工業新聞 大川記者
もしかしたら28年とかになるかもしれないし。
市長
そうですね。27年、28年。実際に協定書が出来上がって、事業計画書ができてね、基本設計が出来上がらないと具体的な工期がどうなるのかっていうのは、これは出せませんから。でも、やっぱりこれだけ遅れてると。それから、事業者も非常に今、厳しい状況になってると。これは半年間、ほぼほぼね、休業してたわけですから、この約3か月間程度。今、ラスベガスとか一部再開してるようですけども、これもコロナ禍において再開してるので、フルスペックのIR施設がフル稼働してるような状況ではありませんから、やはり事業者の投資余力というものも落ちてるわけで、そういうことも勘案をしながら開業時期っていうのを見定めていきたいと、こう思ってます。
日刊工業新聞 大川記者
ありがとうございます。ということは、募集の要項も、これはやっぱり変えていく必要があると思うんですけども、時期に関しては。
市長
時期はこれから見直していきます。
日刊工業新聞 大川記者
分かりました。ありがとうございます。
司会
ほか、ご質問ございますでしょうか。日経新聞さん。
日本経済新聞 髙橋記者
日本経済新聞の髙橋です。IRの話に戻ってしまって恐縮なんですけども、先程、基本協定を結ぶ協議が整っていないということでしたが、そうすると提案書類の書類提出期限は7月頃を予定していましたが、ここの期限は変わらないということなんでしょうか。
市長
いや、それも延ばします。
日本経済新聞 髙橋記者
いつ頃までに延ばすっていうのは。
市長
当面、半年は延ばさないかんでしょうね。
日本経済新聞 髙橋記者
そこから全体的なスケジュールが半年から1年程度遅れて、全面開業時期は26年度末から27から28年に遅れるという理解でよろしいでしょうか。
市長
そこはまだ確定できませんけどね。何の基本協定書もまだ全然中身詰まってないわけだから。でも、そのぐらいのタイムスケジュールになるでしょうっていうことです。
司会
ほか、ご質問ございますでしょうか。日経新聞さん。
日本経済新聞 髙橋記者
IRについてなんですけれども、国が21年の1月から7月としている区域整備申請期間には間に合わないということなんでしょうか。
市長
国の。
日本経済新聞 髙橋記者
はい。
市長
だから、国の申請期間も、これはちょっと延長されるというか、国の方も今そういう検討してると思いますよ。だって、この状況は日本全国、皆同じ、世界中がこの状況なんだから。
日本経済新聞 髙橋記者
国の区域整備計画の申請期間に関しても遅れることを検討しているということが国からも話が来ているということなんでしょうか。
市長
いやいや、国からというか、事務方同士では、やはり今、我々は事業者との協議がこういう形でやっぱ遅れてますという報告をしてますから、それを受け止めてもらってると思います。
https://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000499032.html
司会
横田さん。
フリージャーナリスト 横田記者
フリーの横田一ですけども、カジノIR誘致についてですね、MGMと組んでるオリックスの井上社長、CEOが5月22日の決算説明会で、現時点での方針は変わらないものの、今後数か月でコロナの影響を検証、良い投資先かどうかを再検証すると発言されてるんですが、これを受けて大阪市としてですね、コロナ禍でカジノが高収益性を保ってビジネスモデルとして成り立つかどうか、IRを支えられるかどうかについて検証、調査するお考えはないんでしょうか。
市長
これは我々もコロナを普通のインフルエンザ並みにするために世界中の人たちが今、研究者がね、ワクチン、それから治療薬を開発をしている、研究開発しているわけですから、今日も新聞出てましたけども、塩野義製薬でも来年にはワクチンが作れそうだというような発表がなされてますし、大阪府、大阪市で、阪大、市大と組んで、今、ワクチン研究してるのも、7月には医療関係者に、これは非常に数少ないですけども治験を始めて、9月にはある一定の数を接種できる体制をつくるということになってますから、先程もコロナ禍でということでいうと、この1年、2年という時期が経過をすればね、コロナを普通のインフルエンザとして扱えるようになると思いますので、その後は間違いなくIRという施設はエンターテイメントを中心に日本経済を支える一つのパーツ、ツールになると思ってますので、ぜひ推進していきたいと思います。
フリージャーナリスト 横田記者
それまでの間に、カジノの大手MGMを含めてですね、経営的に厳しくなって、日本に投資する余力があるかどうか、あるいはIRをつくったはいいけども破綻してですね、撤退するみたいな事態もおそれもあると思うんですが、それについてのリサーチをしないのかどうかと。あわせて、それを含めてですね、コロナ禍におけるカジノ、本当に必要か、やるべきかどうかを住民投票にかけるべきかどうかについてお伺いしたいんですが。
市長
まず、MGMさんからは非常にコロナで厳しい、経営的には厳しい。それはもうそうですよ。MGMっていうか、そういうIR事業者のみならず世界中の観光というものを、観光を元にした産業、事業者、全てが今、世界中、苦しい状況ですから、これはIR事業者に限ったことではありません。ただ、IR事業者、MGMさんからは、大阪でのIR実施についてはね、これは全く撤退等々は考えていないと。ただ、今、直接会っていろんな協議できないので、少し時間を延ばしてほしいというふうな連絡はいただいております。やる気は十分あるんだろうと、こう思っておりますし、IRについては我々はもう何度も選挙でIRを推進すると、大阪、夢洲にIR、インバウンド、エンターテインメントの拠点をつくりたいということは何度も選挙で訴えてますし、その選挙での公約でありますから、ぜひ夢洲にIRを進めるために前進したいと思ってます。
フリージャーナリスト 横田記者
ということは、コロナ禍の中で新たに民意を問うことはしないと、住民投票はする必要がないと。
市長
ないですよ。
フリージャーナリスト 横田記者
MGMと組んでるオリックスは再検証すると言ってるんですけども、大阪市としてはそれの必要性はないというお考えと理解してよろしいんでしょうか。
市長
ええ。IRを進めていくっていうのは、これは我々、公約ですから、公約は実現をさせていきます。オリックスさんはどういう考えなのかは、やっぱりオリックスさんの会社の事情等々もあるんでしょうから、それはオリックスさんが判断すればいいと思ってますし。
司会
日経新聞さん。
日本経済新聞 髙橋記者
日本経済新聞の髙橋です。IRについてなんですけれども、一部の報道で、政府は基本方針の決定を7月以降に先送りするという話も出てますけれども、基本方針の決定が7月以降となった場合は、大阪へのIRのスケジュールへの影響についてどのように見られていらっしゃいますでしょうか。
市長
もうスケジュールには影響出てます。現に今、大阪でパートナーを決定するためにMGMさんの基本計画を受け付けるということにしてるわけですけども、そもそも打合せができません。オンラインではできるけども、これはやっぱり1兆円の投資の話ですから、なかなかオンラインだけで全てを網羅できるという状況にもありませんから、今、IR推進局から聞いてるのは、やはり半年から1年、どうしてもコロナによって予定が先送りになるという、そういう状況だと聞いてます。
司会
次の質問をお受けいたします。読売新聞さん。
読売新聞 藤本記者
読売新聞の藤本です。IRに関して先程市長が仰った半年から1年どうしてもコロナで予定が先送りになる状況と聞いているっていうのは、これは、今年の9月頃とされている設置運営事業予定者の選定の話なのか、それとも全面開業時期についての話なのか、この辺はいかがでしょうか。
市長
いや、だから、それが遅れるということは開業時期も遅れますよ。本来であれば、今年の4月にはもう事業者と協議をスタートさせて、基本協定書が秋にはできる予定で考えてたわけですよ。来年の21年の1月から7月の間に国がエリア指定するという、そういう予定だったのが、今、全く基本協定を結ぶ協議が整っておりませんから。この状況の中においては基本協定を取りまとめるのに、まず1年遅れるぐらいの話になってきてますので、全体的に1年から2年程度先送りということになるんじゃないかと、こう思ってると。
読売新聞 藤本記者
それに合わせて全面開業の時期も従来よりもさらに遅れるということは致し方ないというようなお考えですか。
市長
だから、我々はコロナ前はね、2025年の万博前開業というものをめざしてずっとやってきたわけですけど、完全に万博には間に合わないと。万博後開業になります。
読売新聞 藤本記者
あと、府市が示してる条件の地下鉄の延伸費用の一部負担なんですけど、この辺の条件については改めて見直される考えって現時点ではいかがでしょうか。
市長
いや、現時点では見直す考えはありません。とにかくコロナが普通のインフルエンザになればね、今のIRも含め、コロナ前の経済状況は十分取り戻せるわけだから、コロナで今、こういう状況になってるわけだから。
司会
ほか、質問ございますか。日刊工業さん。
日刊工業新聞 大川記者
日刊工業新聞、大川です。今の質問の確認なんですけれども、27年3月までの全面開業という指定については変えないということでよろしいですか。
市長
27年。
日刊工業新聞 大川記者
はい。26年度末までの全面開業としていたと思うんですけども、そのスケジュールについては変えないということでしょうか。
市長
いや、だから、そこも先延ばしになります。今、これだけ遅れれば。
日刊工業新聞 大川記者
もしかしたら28年とかになるかもしれないし。
市長
そうですね。27年、28年。実際に協定書が出来上がって、事業計画書ができてね、基本設計が出来上がらないと具体的な工期がどうなるのかっていうのは、これは出せませんから。でも、やっぱりこれだけ遅れてると。それから、事業者も非常に今、厳しい状況になってると。これは半年間、ほぼほぼね、休業してたわけですから、この約3か月間程度。今、ラスベガスとか一部再開してるようですけども、これもコロナ禍において再開してるので、フルスペックのIR施設がフル稼働してるような状況ではありませんから、やはり事業者の投資余力というものも落ちてるわけで、そういうことも勘案をしながら開業時期っていうのを見定めていきたいと、こう思ってます。
日刊工業新聞 大川記者
ありがとうございます。ということは、募集の要項も、これはやっぱり変えていく必要があると思うんですけども、時期に関しては。
市長
時期はこれから見直していきます。
日刊工業新聞 大川記者
分かりました。ありがとうございます。
司会
ほか、ご質問ございますでしょうか。日経新聞さん。
日本経済新聞 髙橋記者
日本経済新聞の髙橋です。IRの話に戻ってしまって恐縮なんですけども、先程、基本協定を結ぶ協議が整っていないということでしたが、そうすると提案書類の書類提出期限は7月頃を予定していましたが、ここの期限は変わらないということなんでしょうか。
市長
いや、それも延ばします。
日本経済新聞 髙橋記者
いつ頃までに延ばすっていうのは。
市長
当面、半年は延ばさないかんでしょうね。
日本経済新聞 髙橋記者
そこから全体的なスケジュールが半年から1年程度遅れて、全面開業時期は26年度末から27から28年に遅れるという理解でよろしいでしょうか。
市長
そこはまだ確定できませんけどね。何の基本協定書もまだ全然中身詰まってないわけだから。でも、そのぐらいのタイムスケジュールになるでしょうっていうことです。
司会
ほか、ご質問ございますでしょうか。日経新聞さん。
日本経済新聞 髙橋記者
IRについてなんですけれども、国が21年の1月から7月としている区域整備申請期間には間に合わないということなんでしょうか。
市長
国の。
日本経済新聞 髙橋記者
はい。
市長
だから、国の申請期間も、これはちょっと延長されるというか、国の方も今そういう検討してると思いますよ。だって、この状況は日本全国、皆同じ、世界中がこの状況なんだから。
日本経済新聞 髙橋記者
国の区域整備計画の申請期間に関しても遅れることを検討しているということが国からも話が来ているということなんでしょうか。
市長
いやいや、国からというか、事務方同士では、やはり今、我々は事業者との協議がこういう形でやっぱ遅れてますという報告をしてますから、それを受け止めてもらってると思います。
ポイントとしては以下の8点がある(市長発言より筆者抜粋)。
①「この1年、2年という時期が経過をすればね、コロナを普通のインフルエンザとして扱えるようになると思いますので、その後は間違いなくIRという施設はエンターテイメントを中心に日本経済を支える一つのパーツ、ツールになる」
②「ただ、IR事業者、MGMさんからは、大阪でのIR実施についてはね、これは全く撤退等々は考えていないと。ただ、今、直接会っていろんな協議できないので、少し時間を延ばしてほしいというふうな連絡はいただいております」
③「オリックスさんの会社の事情等々もあるんでしょうから、それはオリックスさんが判断すればいいと思ってます」
④「大阪でパートナーを決定するためにMGMさんの基本計画を受け付けるということにしてるわけですけども、そもそも打合せができません。オンラインではできるけども、これはやっぱり1兆円の投資の話ですから、なかなかオンラインだけで全てを網羅できるという状況にもありません」
⑤「基本協定を取りまとめるのに、まず1年遅れるぐらいの話になってきてますので、全体的に1年から2年程度先送りということになるんじゃないかと、こう思ってると」
⑥記者「~あと、府市が示してる条件の地下鉄の延伸費用の一部負担なんですけど、この辺の条件については改めて見直される考えって現時点ではいかがでしょうか」
市長「いや、現時点では見直す考えはありません。とにかくコロナが普通のインフルエンザになればね、今のIRも含め、コロナ前の経済状況は十分取り戻せるわけだから、コロナで今、こういう状況になってるわけだから」
⑦記者「~提案書類の書類提出期限は7月頃を予定していましたが、ここの期限は変わらないということなんでしょうか」
市長「当面、半年は延ばさないかんでしょうね」
⑧「国の申請期間も、これはちょっと延長されるというか、国の方も今そういう検討してると思いますよ」
松井市長は来年7月の認定申請の締め切りが動くとみている
松井市長の答えで重要なのは、国が明らかにしているIR整備計画の認定申請の期間である2021年1~7月について、見直しを「国のほうも検討していると思いますよ」と指摘している部分だ。少し言葉を濁しているが、続けて「国からというか、事務方同士では、やはり今、我々は事業者との協議がこういう形でやっぱ遅れてますという報告をしてますから、それを受け止めてもらってると思います」としていることから、現在の進行のネックというか、デッドラインになっている、来年7月が動くのでは、という感触を持っていることがわかる。そこから、今年7月を予定していた事業提案書(RFP)の提出について「当面、半年は延ばさないかん」という事になり、「全体的に1年から2年程度先送り」という見方になるわけだ。全面開業については、記者からの誘導もありつつ、「そうですね。27年、28年。実際に協定書が出来上がって、事業計画書ができてね、基本設計が出来上がらないと具体的な工期がどうなるのかっていうのは、これは出せませんから」としている。このことから、既に明らかにしていた大阪・関西万博後の開業もやむなし、2026年3月(2025年度末)が、場合によっては2028年3月(2027年度末)もありうるという読みになってくる。
新型コロナウイルスについては、1~2年でワクチンが出来れば、普通のインフルエンザとして扱えるという見方をしていて、その後は従来の観光・インバウンド事業を再開するという考えだが、これからのMICEや富裕層ビジネスの見直しというところまでは、この会見では出ていない。時間が経過すれば、元に戻るという事ではなく、今回の感染症で、万博も含めて、新しいスキームの構築が必要になってくると思うのだが、そこの検証が極めて重要な課題になってくるだろう。
■JaIR関連資料DB
大阪市・令和2年6月4日、大阪市長会見全文
https://jair.report/archive/292/
■関連記事
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 5月28日版
https://jair.report/article/319/