7月26日までにIRの基本方針は策定・公表されるのか!?

JaIR編集委員・玉置泰紀

 日本型IRは、カジノ管理委員会がカジノ管理委員会規則を整備し、免許ライセンスやカジノで可能なゲームの種類、クレジット制度などの運営ルールを決め、これに基づき、国土交通省は基本方針の策定・公表を1月中に行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期された。その延期自体も3~4月の予定が、まだ実行できていない。基本方針の策定・公表のデッドラインは7月26日。政府のIR推進本部が決定することになるのだが、期限まで2か月を切り、厳しさが増している。
 
大阪IR基本構想のイメージ


 そもそも、なぜ7月26日が最終かと言えば、IR整備法が2018年7月26日に公布されており、基本方針決定の期日が、公布から2年を超えない、と整備法に明記されているからだ。基本方針を受けて、各自治体の募集要項も固まり、それぞれ事業者(コンソーシアム)を選び、政府に対して認定申請する。認定申請期間は2021年1月4日~7月30日なのだが、基本方針の策定・公表が遅れれば、当然、認定申請の準備期間が短くなっていき、事業者や自治体への負荷が増していく。
 
 しかし、この最終期限の7月26日や申請期間を変更するためには、新たな立法が必要であるが、6月17日までの第201回通常国会で動議することは考えにくい。
 

大阪IRの開業は1~2年遅れる

 大阪市の松井一郎市長は6月4日の記者会見で、国の基本方針の策定・公表の遅れと、新型コロナウイルスのために事業者(特に海外事業者のMGMリゾーツ)との対面での直接の打ち合わせに支障をきたしていることから、「(IRの手続きなど)全体に1~2年遅れるだろう」と話した。事業者の投資力が落ちていることも指摘、開業時期を見定めたいとしている。
 
 すなわち、既に、2025年大阪・関西万博の閉幕後の開業もやむなしとしていたのだが、2026年3月までの開業というデッドラインも再考される可能性が高い。大阪府の吉村洋文知事も記者団に対して、同じく1~2年の遅れの可能性を認め、RFP(事業提案)の期限も、現状の7月提出(これもそもそも4月提出だった)を「半年は伸ばさなければならないだろう」と話している。確定ではないが、これも政府の対応次第と言える。
 
 新型コロナウイルス対策に集中している政府の中では、現状IR関連の施策の優先順位は決して高くなく、世論の動向も注視する必要がある。また、観光、インバウンドは大きく見直しの時期に入っており、特に、IRの目玉である大型施設のMICEやホテル、アリーナなどは影響が大きく、ニューノーマルの中での運営方針を手探りしているところだ。現在、IR整備法に従って、大きな見直しはないまま進んでいるが、政府がイニシアチブを取って、枠組み自体を見直す時期に来ているのではないだろうか。
 
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