世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、ここに来てようやく制限の緩和が見られ始めている。本稿ではIRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の現段階での動向をお伝えしている。ラスベガス、マカオ、シンガポールに引き続き、今回は韓国の動向になる。
韓国では新型コロナウィルス感染者が最初に確認されたのが1月19日、仁川空港での入国時に中国人の感染が判明し、その後、2月上旬にかけて中国からの渡航者による感染が認められた。1月下旬には最初の国内感染例が見つかり、2月中旬には、大邱市の宗教施設で大規模クラスターが発生。全世界での流行の初期段階において、感染拡大がみられた。
今回の新型コロナウィルスに対しては、2015年に中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大を許した経験を踏まえ、韓国政府は早い段階から対策を取り、感染拡大の防止を目的に広範囲にわたるPCR検査の実施を徹底した。検査実施数ではピーク時には1日1万8000件以上がおこなわれ、早期段階での感染拡大の抑制につながった。
3月にはヨーロッパからの海外帰国者を中心に感染数が急増。渡航に関して、3月19日に入国者に対し特別入国措置を取り始め、さらに3月22日からヨーロッパからの入国者に対して全数検査を実施した。入国者が1日1000人を超え、予想を上回ったため、3月24日からは、症状がある人は空港で検査、症状がない場合は帰宅後3日以内に検査を受けるよう変更した。
4月1日からは海外からのすべての入国者を14日間隔離する防疫管理を強化。海外からの入国者は、症状がある場合は空港で検査を受け、症状がない場合には政府や地方自治体が用意した臨時施設に移動し検査を受診。陽性の場合は入院や治療、陰性の場合も自己隔離措置を義務付けた。海外入国者が規則を守らなかった場合、1年以下の懲役、または1,000万ウォン以下の罰金が科せられる。
4月下旬には国内の新規感染者数が10名前後となったため、5月3日に、5月6日から厳格な防疫策が緩和され「生活防疫」の段階に移行すると発表。公共施設の利用が再開され、会食や会合、行事も指針の順守を条件に認められることになった。しかし再開直後の5月8日にソウル市の繁華街、梨泰院にあるクラブで集団感染が発生。現在はソウルや各地で散発的に感染者が確認されている。5月25日段階では、新規感染者が19名、感染者累計は合計11,225名、死亡者は269名である。
韓国には現在17ヵ所のカジノ施設があり、うち外国人専用が16ヵ所、国内向けが1か所だが、3月時点での感染拡大により、すべての施設が閉鎖した。
韓国国内で外国人専用カジノを運営する最大手のパラダイスは、3月23日にパラダイスシティ(仁川)、パラダイスウォーカーヒル(ソウル市東部)、パラダイスカジノ釜山、済州グランドという自社のすべてのカジノの営業を停止。カジノ閉鎖期間中もホテルは営業(プール部分のみ閉鎖)、ショップ・レストランは営業(店舗によっては閉鎖または短縮営業)していた。その後、4月13日、済州島グランドのカジノを再開。4月20日に韓国本土にある残りの3つ施設のカジノ営業を再開した。韓国カジノの中では最も早い営業再開となった。
パラダイスの施設は感染防止策として、赤外線カメラ設置による検温、施設内でのマスク着用の義務付け、感染が疑われる人の入場制限、共用エリアの定期的な消毒、客室清掃の徹底を挙げている。なお、パラダイスが運営する4施設のうち、仁川にあるパラダイスシティは、横浜IRに名乗りを挙げている日本企業セガサミーとの共同プロジェクトである。
韓国内の外国人専用カジノ大手のもう1社、カジノブランド「セブンラック」を運営するグランド・コリア・レジャー(GKL)は、ソウル2か所、釜山1か所、合計3か所のカジノを3月24日に閉鎖し、5月6日に営業を再開した。GKLのユ・テヨル社長は、「これまでに経験したことのない困難な状況に対応するために最善を尽くしている 」とコメント。ソーシャルディスタンシング、体温チェックを実施し、ゲストにはマスク着用を義務づけた。
また、国内唯一の韓国人によるギャンブルが認められているカンウォン・ランド(江原)は2月23日から閉鎖し、5月8日に一部再開した。
※5月28日追記
カンウォン・ランドでは5月8日にVIPエリアでのカジノが再開し、続いて5月27日にメインのカジノフロアが部分的に再開となる予定だったが、直近で感染者数が急増したことから、メインフロアの再開は緊急中止となった。メインフロアの再開は数週間で再検討される。
パラダイスの4月単月のカジノ収益は79.3億ウォン(約6.9億円)となり、前年比86.1%減となった。JPモルガン証券(アジア・パシフィック)は、パラダイスの第2四半期の収益は「はるかに悪くなる」可能性が高いと指摘している。JPモルガン証券のアナリスト、DS・キム氏は、「ビジネスが正常化したときには、需要が速やかに回復すると予測しているが、正常化はあと2~3四半期(少なくとも)は起こらないと考えざるを得ない」と述べている。また、同証券アナリストのデレク・チェ氏とジェレミー・アン氏は、「需要は低迷している。 厳格な国境管理と非常に限られたフライト状況であるため、韓国自体に『インバウンドギャンブラー』が存在しない」「収入は再開以来、『国内にとどまっている外国人』からの収入にとどまっており、この傾向は国境管理が緩和されるまで続く」と分析している。
外国人の韓国への入国は5月26日段階、いまだ規制対象である。しかしながら、世界各国で入国制限措置が緩和され始めているため、韓国の大手航空各社は6月から国際旅客便の運航を一部再開する予定だ。格安航空会社(LCC)でも運航再開の見込み。また、韓国政府は長期滞在中の外国人(外交官を除く)を対象に6月1日から再入国の際の診断書提出を義務付けることを発表。出国前にも事前に再入国許可を取得することが必要となり、再入国管理を強化する。
今後、韓国IRの回復に関しては、外国人入国規制の緩和のタイミングが重要になる。特に韓国IRの主要客である中国人や日本人に対する規制緩和が待たれるが、いまだ緩和時期は発表されていない。
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韓国での新型コロナウイルスの対応と最新動向
韓国では新型コロナウィルス感染者が最初に確認されたのが1月19日、仁川空港での入国時に中国人の感染が判明し、その後、2月上旬にかけて中国からの渡航者による感染が認められた。1月下旬には最初の国内感染例が見つかり、2月中旬には、大邱市の宗教施設で大規模クラスターが発生。全世界での流行の初期段階において、感染拡大がみられた。今回の新型コロナウィルスに対しては、2015年に中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大を許した経験を踏まえ、韓国政府は早い段階から対策を取り、感染拡大の防止を目的に広範囲にわたるPCR検査の実施を徹底した。検査実施数ではピーク時には1日1万8000件以上がおこなわれ、早期段階での感染拡大の抑制につながった。
3月にはヨーロッパからの海外帰国者を中心に感染数が急増。渡航に関して、3月19日に入国者に対し特別入国措置を取り始め、さらに3月22日からヨーロッパからの入国者に対して全数検査を実施した。入国者が1日1000人を超え、予想を上回ったため、3月24日からは、症状がある人は空港で検査、症状がない場合は帰宅後3日以内に検査を受けるよう変更した。
4月1日からは海外からのすべての入国者を14日間隔離する防疫管理を強化。海外からの入国者は、症状がある場合は空港で検査を受け、症状がない場合には政府や地方自治体が用意した臨時施設に移動し検査を受診。陽性の場合は入院や治療、陰性の場合も自己隔離措置を義務付けた。海外入国者が規則を守らなかった場合、1年以下の懲役、または1,000万ウォン以下の罰金が科せられる。
4月下旬には国内の新規感染者数が10名前後となったため、5月3日に、5月6日から厳格な防疫策が緩和され「生活防疫」の段階に移行すると発表。公共施設の利用が再開され、会食や会合、行事も指針の順守を条件に認められることになった。しかし再開直後の5月8日にソウル市の繁華街、梨泰院にあるクラブで集団感染が発生。現在はソウルや各地で散発的に感染者が確認されている。5月25日段階では、新規感染者が19名、感染者累計は合計11,225名、死亡者は269名である。
4月中旬から済州島のカジノから再開 感染防止策もいち早く
韓国には現在17ヵ所のカジノ施設があり、うち外国人専用が16ヵ所、国内向けが1か所だが、3月時点での感染拡大により、すべての施設が閉鎖した。
韓国国内で外国人専用カジノを運営する最大手のパラダイスは、3月23日にパラダイスシティ(仁川)、パラダイスウォーカーヒル(ソウル市東部)、パラダイスカジノ釜山、済州グランドという自社のすべてのカジノの営業を停止。カジノ閉鎖期間中もホテルは営業(プール部分のみ閉鎖)、ショップ・レストランは営業(店舗によっては閉鎖または短縮営業)していた。その後、4月13日、済州島グランドのカジノを再開。4月20日に韓国本土にある残りの3つ施設のカジノ営業を再開した。韓国カジノの中では最も早い営業再開となった。
パラダイスの施設は感染防止策として、赤外線カメラ設置による検温、施設内でのマスク着用の義務付け、感染が疑われる人の入場制限、共用エリアの定期的な消毒、客室清掃の徹底を挙げている。なお、パラダイスが運営する4施設のうち、仁川にあるパラダイスシティは、横浜IRに名乗りを挙げている日本企業セガサミーとの共同プロジェクトである。
韓国内の外国人専用カジノ大手のもう1社、カジノブランド「セブンラック」を運営するグランド・コリア・レジャー(GKL)は、ソウル2か所、釜山1か所、合計3か所のカジノを3月24日に閉鎖し、5月6日に営業を再開した。GKLのユ・テヨル社長は、「これまでに経験したことのない困難な状況に対応するために最善を尽くしている 」とコメント。ソーシャルディスタンシング、体温チェックを実施し、ゲストにはマスク着用を義務づけた。
また、国内唯一の韓国人によるギャンブルが認められているカンウォン・ランド(江原)は2月23日から閉鎖し、5月8日に一部再開した。
※5月28日追記
カンウォン・ランドでは5月8日にVIPエリアでのカジノが再開し、続いて5月27日にメインのカジノフロアが部分的に再開となる予定だったが、直近で感染者数が急増したことから、メインフロアの再開は緊急中止となった。メインフロアの再開は数週間で再検討される。
パラダイスの4月カジノ収益は前年比86.1%減
カジノの一時的な閉鎖や外国人の入国制限により、外国人専用カジノの運営は厳しい状況が続く。パラダイスは5月12日の2020年第1四半期決算報告で、売上高は1,846.7億ウォン(約161億円)で前年比8.5%減、前四半期比では31.5%減となったが、第1四半期の損失は24.6億ウォン(約2.1億円)で、前年同期の75.3億ウォン(約6.6億円)から縮小したと発表した。第1四半期は新型コロナウィルスの影響は限定的なものとなった。パラダイスの4月単月のカジノ収益は79.3億ウォン(約6.9億円)となり、前年比86.1%減となった。JPモルガン証券(アジア・パシフィック)は、パラダイスの第2四半期の収益は「はるかに悪くなる」可能性が高いと指摘している。JPモルガン証券のアナリスト、DS・キム氏は、「ビジネスが正常化したときには、需要が速やかに回復すると予測しているが、正常化はあと2~3四半期(少なくとも)は起こらないと考えざるを得ない」と述べている。また、同証券アナリストのデレク・チェ氏とジェレミー・アン氏は、「需要は低迷している。 厳格な国境管理と非常に限られたフライト状況であるため、韓国自体に『インバウンドギャンブラー』が存在しない」「収入は再開以来、『国内にとどまっている外国人』からの収入にとどまっており、この傾向は国境管理が緩和されるまで続く」と分析している。
外国人の韓国への入国は5月26日段階、いまだ規制対象である。しかしながら、世界各国で入国制限措置が緩和され始めているため、韓国の大手航空各社は6月から国際旅客便の運航を一部再開する予定だ。格安航空会社(LCC)でも運航再開の見込み。また、韓国政府は長期滞在中の外国人(外交官を除く)を対象に6月1日から再入国の際の診断書提出を義務付けることを発表。出国前にも事前に再入国許可を取得することが必要となり、再入国管理を強化する。
今後、韓国IRの回復に関しては、外国人入国規制の緩和のタイミングが重要になる。特に韓国IRの主要客である中国人や日本人に対する規制緩和が待たれるが、いまだ緩和時期は発表されていない。
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