世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、ここに来てようやく制限の緩和が見られ始めている。現段階でのIRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を整理してお伝えする。
都市国家で人口密度が高く、アジアのハブとして出入国者が多いシンガポールは感染症のリスクが高いため、過去のSARS流行などの経験も踏まえ、政府としての対応は比較的早くおこなわれた。
4月3日に政府から「サーキット・ブレイカー」と呼ばれる都市封鎖措置が発表され、不要不急の事業活動は4月7日から5月4日まで中止が決定した。さらに4月21日段階で6月1日までの延長を決定した。3月23日から外国人の全ての短期滞在者は入国・経由不可となり、またシンガポール国籍、永住者の入国は14日間の隔離措置がとられ、検疫が強化されている。
各自の行動様式を変えるため、国を清潔にする「SGクリーン」キャンペーンを本格化し、小売業などに認証マークを付与する活動がおこなわれいる。サーキット・ブレイカー中の行動制限の一例としては、外出時のマスク未着用は罰金対象となっている。政府は感染者追跡アプリ「トレース・トゥギャザー」をリリースし、100万ダウンロードを超えたが、個人情報の問題もあるため人口全体では20%程度にとどまる。
シンガポールの2か所のIR、マリーナベイ・サンズとリゾートワールド・セントーサは 3月26日にカジノフロアへの入場を一定顧客に限る施策を発表。さらに、政府のサーキット・ブレイカー発表を受けて、4月6日にカジノを閉鎖、4月7日にIR全体を営業停止(セントーサではテイクアウト対応の一部店舗の制限付きで営業)としている。
IRオペレーターのゲンティン・シンガポールは5月13日、2020年第1四半期決算発表にて、「(新型コロナウィルスにより)リゾートワールド・セントーサも深刻な影響を受けており、今後も大きな課題に直面する」と述べた。「営業停止は近い将来も続くと思われ、さらに、社会的距離の確保と制限的な国境規制は中期的な回復を妨げ続ける」とし、「今年の残りの見通しについても悲観的なまま」という見解を示した。
マリーナベイ・サンズは公式ウェブサイトで、同施設は「シンガポール政府の新型コロナウィルス対策への継続的な取り組みを支援するため、引き続き閉鎖する」「シンガポールの段階的な経済活動再開に合わせて、再開スケジュールについては当局と緊密に協力している」とコメント。また親会社のラスベガス・サンズは、5月13日、日本IRからの撤退発表時に「ラスベガス・サンズは今後はシンガポールとマカオのカジノに集中する」と述べている。なお、マリーナベイ・サンズのショッピングモール内にあるハンバーガーレストラン「ブラック・タップ」ではIR閉鎖前の3月下旬から4月初旬にかけて、新型コロナウィルスのクラスターが発生し、8件の症例が確認された。
3月下旬以降、シンガポール全体では、外国人労働者専用宿舎で大規模クラスターが発生し感染者が激増。5月22日段階で感染者が合計30,426人に達し、死者数は全部で23人。感染者全体の約9割が外国人労働者だ。都市国家シンガポールの人口は580万人だが、外国人労働者は100万人以上いる。南アジアの出身者が大半を占める低賃金の外国人労働者は専用宿舎で「3密」状態で生活しており、外国人労働者への対策の遅れが露呈している。現在、宿舎への行き来は禁止され、隔離されている。
フェーズ1として再開されるのは、製造業や金融、保険、卸売など感染リスクが低い産業の事業や、不要不急ではないが日常生活で必要とされる自動車サービス、菓子・デザート店、ペット用品店、理美容院、クリーニング店など。フェーズ2で、飲食店内での食事、小売店の営業が再開。フェーズ3で、スパ、映画館、劇場、バー、ナイトクラブなどが再開となる。営業再開する店舗や企業には、政府の個人情報記録アプリ「セーフ・エントリー」の導入が義務付けられる。IRの営業再開時期は少なくともフェーズ3以降になると見られるが、具体的な時期は示されていない。
また、シンガポールのチャンギ空港でのトランジット(乗り継ぎ)規制も6月2日に解除されることが発表された。乗り継ぎ客と他の客が接触しない規定とし、空港職員にはマスクなどの防護具の着用が義務付けられる。エアラインの回復にはほど遠い状況ではあるが、サーキット・ブレイカー終了とともに一段階前進した。
■関連記事
・海外版・IR記事まとめ
5/13~5/19 https://jair.report/article/310/
5/6~5/12 https://jair.report/article/304/
4/29~5/5 https://jair.report/article/298/
4/22~4/28 https://jair.report/article/295/
4/15~4/22 https://jair.report/article/292/
※6月18日追記
・【新型コロナのIRへの影響レポート】シンガポール 6月18日版 https://jair.report/article/339/
シンガポール IRは4月7日から全面営業停止が続く
シンガポールでは新型コロナウィルス感染者が最初に確認されたのが1月23日、武漢からの渡航者によるもので、続いて2月4日には最初の集団感染が認められたが、感染者の濃厚接触者を徹底的に調査し、街頭の防犯カメラの映像解析なども利用することで3月中旬時点では感染者は500人規模に抑え込んでいた。都市国家で人口密度が高く、アジアのハブとして出入国者が多いシンガポールは感染症のリスクが高いため、過去のSARS流行などの経験も踏まえ、政府としての対応は比較的早くおこなわれた。
4月3日に政府から「サーキット・ブレイカー」と呼ばれる都市封鎖措置が発表され、不要不急の事業活動は4月7日から5月4日まで中止が決定した。さらに4月21日段階で6月1日までの延長を決定した。3月23日から外国人の全ての短期滞在者は入国・経由不可となり、またシンガポール国籍、永住者の入国は14日間の隔離措置がとられ、検疫が強化されている。
各自の行動様式を変えるため、国を清潔にする「SGクリーン」キャンペーンを本格化し、小売業などに認証マークを付与する活動がおこなわれいる。サーキット・ブレイカー中の行動制限の一例としては、外出時のマスク未着用は罰金対象となっている。政府は感染者追跡アプリ「トレース・トゥギャザー」をリリースし、100万ダウンロードを超えたが、個人情報の問題もあるため人口全体では20%程度にとどまる。
シンガポールの2か所のIR、マリーナベイ・サンズとリゾートワールド・セントーサは 3月26日にカジノフロアへの入場を一定顧客に限る施策を発表。さらに、政府のサーキット・ブレイカー発表を受けて、4月6日にカジノを閉鎖、4月7日にIR全体を営業停止(セントーサではテイクアウト対応の一部店舗の制限付きで営業)としている。
IRオペレーターのゲンティン・シンガポールは5月13日、2020年第1四半期決算発表にて、「(新型コロナウィルスにより)リゾートワールド・セントーサも深刻な影響を受けており、今後も大きな課題に直面する」と述べた。「営業停止は近い将来も続くと思われ、さらに、社会的距離の確保と制限的な国境規制は中期的な回復を妨げ続ける」とし、「今年の残りの見通しについても悲観的なまま」という見解を示した。
マリーナベイ・サンズは公式ウェブサイトで、同施設は「シンガポール政府の新型コロナウィルス対策への継続的な取り組みを支援するため、引き続き閉鎖する」「シンガポールの段階的な経済活動再開に合わせて、再開スケジュールについては当局と緊密に協力している」とコメント。また親会社のラスベガス・サンズは、5月13日、日本IRからの撤退発表時に「ラスベガス・サンズは今後はシンガポールとマカオのカジノに集中する」と述べている。なお、マリーナベイ・サンズのショッピングモール内にあるハンバーガーレストラン「ブラック・タップ」ではIR閉鎖前の3月下旬から4月初旬にかけて、新型コロナウィルスのクラスターが発生し、8件の症例が確認された。
3月下旬以降、シンガポール全体では、外国人労働者専用宿舎で大規模クラスターが発生し感染者が激増。5月22日段階で感染者が合計30,426人に達し、死者数は全部で23人。感染者全体の約9割が外国人労働者だ。都市国家シンガポールの人口は580万人だが、外国人労働者は100万人以上いる。南アジアの出身者が大半を占める低賃金の外国人労働者は専用宿舎で「3密」状態で生活しており、外国人労働者への対策の遅れが露呈している。現在、宿舎への行き来は禁止され、隔離されている。
6月2日から都市封鎖措置が段階的に緩和、IR再開時期は未定
外国人労働者宿舎での大規模クラスターが深刻であるものの、市中感染者は1日10人程度と減少傾向にあることから、5月19日、シンガポール政府は6月2日から封鎖措置の緩和をおこなうと発表した。経済活動の4分の3が正常化され、通勤者は平時の15%から20%程度になることを見込んでいる。緩和は段階的におこなわれる予定で、6月2日からフェーズ1に入り、その後は市中感染の状況を見ながら、フェーズ2、3と進む。フェーズ1として再開されるのは、製造業や金融、保険、卸売など感染リスクが低い産業の事業や、不要不急ではないが日常生活で必要とされる自動車サービス、菓子・デザート店、ペット用品店、理美容院、クリーニング店など。フェーズ2で、飲食店内での食事、小売店の営業が再開。フェーズ3で、スパ、映画館、劇場、バー、ナイトクラブなどが再開となる。営業再開する店舗や企業には、政府の個人情報記録アプリ「セーフ・エントリー」の導入が義務付けられる。IRの営業再開時期は少なくともフェーズ3以降になると見られるが、具体的な時期は示されていない。
また、シンガポールのチャンギ空港でのトランジット(乗り継ぎ)規制も6月2日に解除されることが発表された。乗り継ぎ客と他の客が接触しない規定とし、空港職員にはマスクなどの防護具の着用が義務付けられる。エアラインの回復にはほど遠い状況ではあるが、サーキット・ブレイカー終了とともに一段階前進した。
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・海外版・IR記事まとめ
5/13~5/19 https://jair.report/article/310/
5/6~5/12 https://jair.report/article/304/
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4/22~4/28 https://jair.report/article/295/
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※6月18日追記
・【新型コロナのIRへの影響レポート】シンガポール 6月18日版 https://jair.report/article/339/