【新型コロナのIRへの影響レポート】ラスベガス 5月19日版

二上葉子

 世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、ここに来てようやく制限の緩和が見られ始めている。現段階でのIRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を整理してお伝えする。


ラスベガス カジノ再開は6月以降

 ラスベガスのあるネバダ州では3月18日に州内の生活に不可欠でないビジネスがすべて停止となり、それに伴いラスベガスのすべてのカジノ、440か所が閉鎖した。その後、州内では新型コロナウィルス感染拡大がピークアウトしたと見られ、一部ビジネスについて5月7日から州全体の営業停止を解き、再開する旨を発表。再開が認められたのは、レストラン、理容室、ヘアサロンとほとんどの小売業が含まれているが、カジノやジム、バー、映画館などの娯楽施設は含まれておらず、引き続き閉鎖されている。
IR事業者に対するネバダ・ゲーミング管理局からの5月14日通達
 
 州が発表した再開のロードマップでは、カジノに関してはフェーズ2以降、早くて6月以降の再開とされ、カジノ施設の再開の最終判断はネバダ・ゲーミング管理局(Nevada Gaming Control Board)に委ねられている。

 また、ネバダ州カジノ委員会(Gaming Commission)ではカジノ再開のためのガイドラインを承認し、規則は州の400数以上の規定規模のカジノに対して適用される。ガイドラインには、従業員の抗体検査や防護具の普及、清掃強化、新型コロナウィルス関連の説明責任や監視義務が含まれる。各ゲーミングエリアの占有率、テーブルゲームの人数制限なども盛り込まれた。当局は「ライセンシーだけでなく、従業員やゲストのために健全」である指針であるとしている。

 以上を受けて、ラスベガスの主要オペレーターは6月以降の再開に向けて準備を進めている。

 ウィン・リゾーツは、州のフェーズの早い段階で「ウィン・ラスベガス」と「アンコール」を再開する方向で模索。「ナイトクラブ、コンベンションエリア、ショーなどの「大規模な大衆が集まる場所」はすぐにはオープンしない」と述べている。

 MGMはフラグシップの「ベラージオ」を含む2~3つのカジノをオープンするとCEOが発言。再開は少数のホテル・レストラン(テイクアウト)などから段階的となり、カジノ再開の動きがあれば「ベラッジオが最初になるだろう」と述べた。なお、MGMがAEGライブと共同で運営している「Tモバイルアリーナ」は年内の再開は難しいと言及。再開計画には、従業員やゲストのスクリーニング、全従業員のマスク着用、社会的な距離の確保、空調システムの強化、非接触型ソリューションの実装などが含まれている。

MGMが示す再開プランにある、カジノフロアでの公衆衛生対策強化

 シーザーズはまずは「シーザーズパレス」を再開させる方針で、他施設は段階的に再開する予定だ。再開にあたって、テーブルゲームやスロットの席の制限、社会的な距離感を保つための施策が展開される予定。また全従業員にマスクが支給され、消毒方法のトレーニングなどを徹底し、従業員向けの健康診断プログラムを開始するとしている。再開までの間の従業員支援プログラムも発表している。

 ラスベガス・サンズは「ベネチアン」「パラッツォ」を6月中に再開すると発表。再開までの間、スタッフへの給料と福利厚生の提供を継続する予定だ。従業員は全員、復帰前に新型コロナウィルスの検査を義務付けられる。

 カジノ再開プランが予定通り進んだとしても、併設の劇場やナイトクラブでのエンターテイメント再開はさらに先になり、ラスベガスが元通りの姿になるには相当な時間がかかると見られている。アジアの主要IRであるマカオ、シンガポールに比べると、ラスベガスの回復は最も遅くなるという予測だ。ラスベガスはエアラインに依存した観光都市であるため、渡航制限の解除とフライトスケジュールの回復に拠るところが大きく、オペレーターの一部は航空会社と共に先行して解除後に向けた策を投じる考えだ。

新型コロナウィルス流行以前のラスベガス

 現地ではカジノ再開慎重派のネバダ州知事スティーブ・シソラック氏と、経済優先派で早期再開を要望するラスベガス市長キャロリン・グッドマン氏との間でパンデミック政策に関して意見の相違があるが、WPA Intelligenceが実施した世論調査によると、パンデミックに対するシソラック氏のアプローチと、州内の重要でない企業の操業停止への対応をネバダ州民の64%が「支持」した。一方で、グッドマン氏のスタンスには有権者の61%が、同意していないと答えている。ネバダ州民の22%が閉鎖制限をすぐに解除してほしいと考えている一方で、35%が5月末までに解除すべき、13%が夏の終わりまで制限すべき、4%が秋まで制限を維持すべきだと答えた。シソラック州知事によって示された再開スケジュールは概ね支持されていると見られる。
 

アメリカの各州ではカジノ再開の動き

 ネバダ州以外の州でもカジノは閉鎖となっているが、一部地域では再開の動きが見られる。モンタナ州では早くも新型コロナウィルスによる閉鎖を一部解除しており、5月4日からカジノが再開、その後もアリゾナ州やフロリダ州のハードロックが5月末までに再開するなどアメリカ各州で動きは加速している。

 また、昨年オープンしたばかりの「アンコール・ボストンハーバー」のあるマサチューセッツ州では、5月18日に州内の一部のビジネスが段階的に再開された。この再開の第一段階にはカジノやホテルは含まれていないものの、その後の再開に向けて、ウィン・リゾーツはアンコール・ボストン・ハーバーの再開計画の概要を発表している。


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※6月6日追記
・【新型コロナのIRへの影響レポート】 ラスベガス 6月5日版 https://jair.report/article/333/