IRへの積極性を示した横浜市の調査報告書「その4」を読みとく

JaIR編集委員・玉置泰紀(KADOKAWA)

 IR導入をするか、しないかを態度を保留している横浜市から5月27日に発表された「平成30年度IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査報告書について」。概要には、12の事業者すべてが想定立地場所に「山下ふ頭」を挙げたこと、投資見込み額で約6200億円~約1兆3000億円という規模感が示されたことが明記され、各メディアでも大きく取り上げられた部分だ。経済効果や雇用数、自治体の増収見込みなども明快に書き込まれており、すでに手を上げている大阪府市や和歌山県が先行して出してきた数字に続くものといえる。


市民説明会で披露された横浜市のIRの検討経過
 

4回目となる調査報告書で立候補の準備を整えた


 そもそもこの調査は、「魅力ある横浜の実現に向け、都心臨海部での賑わいや活力を生み出すため、IR(統合型リゾート)や公民連携(PPP)などの手法を活用した戦略的な都市づくりを検討」という目的で実施されており、平成27年3月の「その1」は統合型リゾートの基礎的な情報、説明のまとめ)、平成28年3月の「その2」は海外の事例を元に、なぜIR・カジノが導入されたのかの報告、そして平成29年3月の「その3」は海外のIR事例、国内の公民連携事例、海外のMICE事例の報告と、3年前から3回実施されている。

 今回の「その4」は海外オペレーターなど12の事業者(うち9社は社名を公表)と12人の有識者、神奈川県警本部、公益財団法人神奈川県暴力追放推進センターへの、情報提供依頼、ヒアリングを行ない、「国が進めている日本型IRの制度や横浜におけるIRの事業性、コンセプトやイメージ、経済的・社 会的効果、想定される懸念事項やその対策」を調査するために実施された。

 内容としては多岐にわたるが、過去の3回が横浜自体でのIRがどういうものなのかには触れず、基礎的な議論や啓蒙・啓発的な内容だったのに対し、今回は初めて具体的に横浜での開業イメージ、また開業した場合の問題をヒアリングしたことが注目される。そういう意味では、今回の報告は、横浜市としてIR導入をする・しないをまだ決めていない中、実質、事業者からのRFCを取りまとめ、いつでも立候補ができる準備を整えたと言える。

 横浜市では、5月15日に、カジノ抜きのMICE施設誘致を目指す団体「横浜港ハーバーリゾート協会」(横浜港運協会244社)の設立を同協会の藤木幸夫会長が発表し、このあと5月22日には、横浜商工会議所の上野孝会頭が記者会見で2019年度中にIR誘致を目指す推進協議会発足する方針を発表するなど、さまざまな思惑が交差している。これらの動きに対して、この報告は具体的な“横浜の”IR像を示したものといえる。

■関連リンク

【概要版】平成30年度IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査(その4)報告書(PDF:1,540KB)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/ir.files/irhoukoku4_gaiyo.pdf

平成28年度IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査(その3)報告書(PDF:6,209KB)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/ir.files/irhoukoku3.pdf

平成27年度IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査(その2)報告書(PDF:1,381KB)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/ir.files/irhoukoku2.pdf

平成26年度IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくり検討調査報告書(PDF:2,716KB)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/ir.files/irhoukoku.pdf