九州・長崎IRへのカジノ・オーストリアの提案内容を見る

JaIR編集委員 玉置泰紀

 2021年9月28日、長崎県議会総務委員会にて、委員および傍聴している記者向けに長崎県が配付したCASINOS AUSTRIA INTERNATIONAL(以下カジノ・オーストリア)の事業者提案概要書を読み解いてみた。長崎県は2021年8月30日付で、九州・長崎IRの設置運営事業予定者としてカジノ・オーストリアと基本協定を締結しており、その際に提案内容を公開していたが、今回配布された資料は、さらに詳細に計画が説明されている。

 25ページからなる資料では、オーストリア共和国の国有企業で歴史あるカジノオペレーターであること、厳しい審査を受けたクリーンな経営であること、ウィーン少年合唱団やウィーン室内管弦楽団に代表される世界最高峰の音楽団体とのコネクションや、歴史に残るアートコレクションとのコネクションがあることなどを強調。また、モダンジャパンをコンセプトにした複数の屋内外施設で、日本の文化や伝統を最先端のXR技術に掛け合わせ、新たなエンターテインメントを提供することを謳っている。
九州・長崎IRの全体イメージパース

総事業費は約3,500億円、開業は最短で2027年中ごろを予定

 カジノ・オーストリアは1934年、オーストリア共和国により設立された後、グループの国際的活動を統合するために1977年に創業された。現在は、オーストリア、ドイツなど、ヨーロッパを中心にカジノ運営を行っているほか、 オーストラリア、ベルギー、リヒテンシュタイン、 ハンガリー、デンマーク、エジプト、 パレスチナなど、世界35カ国でカジノと娯楽施設の開設に携わっている。贈収賄防止マネジメントシステム(ISO37001)、コンプライアンスマネジメントシステム(ISO19600)などの世界標準規格をクリアしている。

 総事業費は、約3,500億円(開業時)で、九州内での経済波及効果は約3,200億円(運営等)、雇用創出効果は約3万人を見込んでいる。延べ来訪者は約840万人を想定しており、開業は最短で2027年中ごろを予定している。

以下、各施設や施策について資料をもとに概説する。
・MICE
MICEは、国内外の誘致競争に勝ち抜くため、世界トップレベルで使いやすい会議場・展示場を構築し、最先端のICT技術を導入して、ナンバーワンでオンリーワンのMICE施設を目指す。

・魅力増進施設
魅力増進施設として、多種多様なプログラムを実施できる、モダンジャパンをコンセプトにした複数の屋内外施設を準備していく。中心になる施設は、劇場・体験(九州・日本のコンテンツ×最先端技術)を楽しめる「ジャパン・ハウス」で、この他にも既存施設(迎賓館)をリノベーションし、展示を主目的とした「ジャパン・アート」施設も建設を予定している。
 これら2つの屋内施設に加えて、「ジャパン・スクエア&ジャパン・ストリート」という、屋外のイベントや展示広場を構想、広場と並木道を設置する。
・送客施設
送客施設の全体方針は来訪者1人1人の属性や趣向に合わせた最適な送客を実現するとともに、歴史的文化財や自然遺産をはじめ、さまざまな本物をコンテンツ化する。カジノ・オーストリアでも、送客先との連携を担う地域連携部を作り、地域との連携を強化し、送客先の魅力をより引き出すための取組を重視した運営を行っていくという。

・宿泊施設
宿泊施設は、国賓や国家元首等にも対応でき、 IR施設内の各エリアのコンセプト・街並みに溶け込んだホテル・温泉旅館施設を計画。宿泊施設全体で2,000室以上を想定しており、以下の4つのタイプの宿泊施設を整備していく。

・来訪および滞在寄与施設
来訪及び滞在寄与施設としては、非日常的な環境で快適な日常を送るために、幅広く集客力の高いコンテンツ、データに基づいた訴求から、以下のような施策で、集客と長期滞在を促していく。
・カジノ施設
カジノ・オーストリアの特徴を活かしたカジノ施設は約12,000㎡で、ラスベガスやマカオ、シンガポールなどのアメリカ、アジアとは違ったオーストリア風のデザインを採用。アジアでは珍しい、ヨーロッパ流を取り込んだ格式高い大人の社交場にしていくという。
・交通プラン
交通プランは陸上と海上で以下のようなプランが立てられている。
 今後の流れは、長崎県と設置運営事業予定者のカジノ・オーストリアが共同して区域整備計画の作成を行ったうえで、2022年4月28日までに国土交通大臣に区域整備計画を申請していく。

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