人工島にヘブンを作る 夢洲IRをビジュアルで訴えたメルコリゾーツ

大谷イビサ(JaIR編集部)

 [関西]統合型リゾート産業展のオペレーター講演の4番手として登壇したのは、メルコリゾーツ&エンターテインメントの会長兼CEO ローレンス・ホー氏。2週間に1回の頻度で日本を訪れるというホー氏は、ラスベガスとも、マカオとも、シンガポールとも異なる夢洲のIRの姿を洗練された完成予想図で聴衆に印象づけた。


メルコリゾーツ&エンターテインメント 会長兼CEO ローレンス・ホー氏
 

夢洲のIRで目指すのは「Extraorgdinaryな体験」


 「また大阪に戻ってきてうれしい」と第一声を挙げるメルコリゾーツ&エンターテインメント(以下、メルコリゾーツ)の会長兼CEOであるローレンス・ホー氏。ホー氏が橋下元大阪知事と初めて話したのは2009年にさかのぼる。それから10年経ち、いよいよIRの予定地は夢洲に決まり、スケジュールも定まりつつある。夢洲のIR事業者に選定された際には本社を大阪に移すとコメントしているホー氏は、「日本は特別。育てなければならないこと、守らなければならないこと、活性化しなければならないことがたくさんある」と語る。

 設立15年のメルコリゾーツ。歴史は浅いが、マカオで大きな成功を収めてきた。ホー氏は、「Facebookが生まれた年にメルコリゾーツも生まれた。時代は変わりつつある。若き起業家たちが新しいエネルギーを古い産業に注ぎ込み、市場で優位に立っている。ディスラプション(破壊)による分断と変化を受け入れ、トランスフォームし、過去に縛られることなく、将来を作っている」とエネルギッシュに語る。「若きカリスマ」と呼ばれるホー氏が率いるメルコリゾーツは2006年にはNASDAQへの上場を果しており、時価総額もすでに1兆円を超えている。

 メルコリゾーツは「マスラグジュアリー」という顧客をターゲットに、地域に必要なIRを作るため、新しい形のリゾートを作ってきた。その代表格となるのが、ユニークな形状で知られるタワー型ホテル「モーフィアス」と言える。また、安全なゲーミングのために業界で初めて顔認証(Facial Recognition)を導入。厳しい業界スタンダードを遵守し、カーボンオフセットなどの社会的な責任も果していくとアピールした。「すべての産業は変わらなければならない。われわれはそれを牽引していこうと考えている」とホー氏は語る。

 そして、ホー氏の眼前にあるのは日本だ。「ラスベガスでも、シンガポールでも、マカオでもなく、日本である。(最後発とも言える)日本はユニークなポジションだ。今までのほかの地域の失敗からも、成功したプレミアムツアーからも学ぶこともできる」とホー氏は訴える。その上で、数百万という観光客を呼び込むことで得られる成功を、幅広いローカルコミュニティと分かち合いたい。「大阪で新しい時代をみなさんと共有したい」とホー氏はアピールする。

 もう1つ重要なのは、誰を呼び込むのか。「日本に興味を持ち、文化に魅力を感じ、そこそこの収入を持ち、日本や地方に対して前向きに貢献できる人。これがプレミアムゲスト」とホー氏は語る。こうしたプレミアムゲストを魅了するため、メルコリゾーツは才能のあるシェフを迎え、ほかに例を見ないExtraordinaryなエンターテインメントを提供しているという。「ゲストは要求が厳しいし、よく旅行をしている。新しい経験や文化を好む。プレミアムなものが必要で、ディスカウントはダメだ」とホー氏はアピールする。


標準に対する圧力と戦う 決してコピーは作りたくない


 続いて登壇したのは、メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパンで設計部門のバイスプレジデントを務めるピム・ロベレクス氏。1月より詳細に話すと語るロベレクス氏は、ホー氏の話を受けた夢洲のIRについて「これはExtraordinaryなIRの次世代の姿。エンターテインメント、スリル、文化、おもてなしなどを統合し、かつてないレベルに高めるもの。磁石のように、洗練されたレジャートラベラーを惹きつけ、グローバルのトラベラーのデスティネーションにもなるでしょう」と抱負を語る。


メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン 設計部門 バイスプレジデント ピム・ロベレクス氏

 夢洲のIRは、マリーナ・ベイ・サンズでも、ラスベガスの伝統的なイベント会場でもないという。「確かに、今までのモノをコピーすれば、安くできるでしょう。でも、競合他社の株主はそれを見て喜ぶでしょう。でも、大阪はシンガポールでも、ラスベガスでもありません。標準に対する圧力と戦いたいし、決してコピーは作りたくない。それぞれのプロジェクトはユニークで、フレッシュなデザインのソリューションだ」とロベレクス氏は語る。単にトラベラーを惹きつけるだけでなく、コンテンツを呼び込むことこそ重要だという。

 ロベレクス氏は初公開となる夢洲IRの完成予想図を惜しげもなく披露する。メルコのフラッグシップホテルであるモーフィアスを思わせる流線型の建物や近未来的な高層建築物、展示場とおぼしき長方形の建物が豊かな緑と池の中に林立。この中には4つのホテル、国際的なイベントを開催できるMICE施設、ショッピングセンター、ミュージアム、イベントゾーン、カジノが設置され、巨大な日本庭園やヘルスケアに特化した施設も用意される。「簡単に言えば、人工島にヘブンを作るということだ。夢洲でこれを実現したい」とロベレクス氏は語る。

ラグジュアリなヘルスケア施設

 最後、壇上に戻ってきたホー氏は、われわれが幸運にもIRのライセンスを得ることができたら、このような最新のホテルやMICE施設を作っていくとアピール。「私が初めて日本に来たとき、シティ・オブ・フューチャー(未来都市)に来たと感じた。あれから40年経ったが、今も日本を本当に尊敬している。新しい令和の時代、新しいルールと価値観にのっとって、みなさんとともに大阪で日本のショーケースを作ることができると思う」とセッションを締めた。

メルコリゾーツ&エンターテインメント
https://www.melco-resorts.jp/jp/index.php.html