【新型コロナのIRへの影響レポート】マカオ 2021年2月2日版 (2/3)

二上葉子

マカオのカジノ運営6社は従業員にボーナス支給を決定

 マカオのカジノオペレーター全6社、SJMホールディングス、MGMチャイナ、ウィン・マカオ、メルコ・リゾーツ、ギャラクシー・エンターテインメント、サンズ・チャイナはそれぞれ従業員へ特別ボーナスを支給すると1月に発表した。

 各社のボーナス発表は次の通り。SJMは、対象となる従業員に給与の「2ヶ月または1.5ヶ月分」に相当する「生活補助金」を支給すること発表。MGMチャイナは、「非管理職の自社社員」に「裁量ボーナス」を支給するとし、「90%以上」の従業員を網羅すると述べた。ウィンは、この特別支給は「現在の従業員13,069人の98.5%」に及ぶとコメント。「給与総額の1ヶ月分に相当する年間ボーナス」と説明し、選考基準は明らかにしていない。メルコも同様に「1ヶ月分相当の裁量ボーナスの支払い」と報じており、2月12日の春節前に支給を完了させることを発表。 ギャラクシー・エンターテインメントは「スタッフの98%をカバーする」と伝え、給料の1か月と同等の特別な給付金であることに言及。支払いは2月10日に実施される。サンズ・チャイナは、2月8日に「資格のある2万6,000人以上の労働者」に「裁量手当」を支給すると発表した。

 以下、各社の動きを紹介する。

●メルコリゾーツ
 メルコリゾーツは、同社が運営するシティ・オブ・ドリームス内のホテル「ヌワ」のリニューアルオープンを延期すると発表した。当初は旧正月の直前の2月8日に再開する旨を公式ホームページに掲載していたが、これを取り消して延期された。工事遅延により、客室が一般に公開されるのは「3月」になる可能性があるとしている。1月27日、シティ・オブ・ドリームス内で展開する広東料理レストラン「Jade Dragon」がミシュランで星3を維持(引き続き獲得)するというニュースもあった。

 メルコリゾーツ&エンターテインメント社の子会社である、メルコリゾーツファイナンス株式会社は、1月13日の報告で、10月と11月のマカオでの総ゲーミング収入(GGR)を合わせると、2020年の第3四半期と比較して「約94%増加した」と発表した。具体的な数字は今のところ明らかになっていない。大きな要因は10月と11月の取引更新は、2,500万ドル(約26億円)規模でメルコリゾーツファイナンス社が2029年を期限とする5.375%の、無担保債券募集の価格設定を発表したことに伴うものであるとしている。

 メルコリゾーツのマカオの旗艦物件であるシティ・オブ・ドリームスの第3四半期の総営業収入は9,140万ドル(約94.8億円)で、2019年第3四半期は7億8730万ドル(約817億円)だった。また、9月30日までの3ヶ月間のシティ・オブ・ドリームスの非ゲーミング収入総額は、1,800万ドル(約18.6億円)で、2019年第3四半期の1億4020万ドル(約125億円)だったとしている。

 また、メルコリゾーツが運営するスタジオ・シティは、直近の第4四半期中における10月と11月の同施設のゲーミング総収入(GGR)は、2020年第3四半期全体と比較して約146%増加したという。同時に、Covid-19への対策としてマカオで実施されている「大規模な渡航禁止や制限、ビザの制限、検疫やソーシャルディスタンシングの要件」により、マカオのGGRは引き続き「マイナスの影響」を受けると予想していると述べた。また新たな債券を発行する計画を明らかにした。スタジオ・シティ・ファイナンスによると、新しい債券からの収益は手元資金と合わせて、関連費用に充当し、公開買付け後に未償還の2024年債を全額償還したうえで、残額はスタジオ・シティ・フェーズ2におけるプロジェクトの一部にも使用する予定であるとしている。


●MGMチャイナ
 MGMチャイナの親会社であるMGMリゾーツに対し、香港の投資会社スノーレイク・キャピタルはマカオのカジノ物件の20%を戦略的パートナー「中国の大手消費者インターネット企業、旅行およびレジャー企業」に売却するよう、1月初旬に要請した。スノーレイクキャピタルは、MGMチャイナホールディングスの約7.5%株式を所有している。また、親会社のMGMリゾーツはMGMチャイナの56%株式を所有している。

 投資会社は、「彼らのビジネスはマカオの観光産業、特にMGMチャイナと非常に相乗効果的である」この戦略的パートナーに4社を「適切な候補者」として、Webベースのショッピングプラットフォームとして機能するMeituan社、オンライン旅行代理店サービスのプロバイダーであるTrip.comグループ、中国のホテル運営会社およびフランチャイザーであるHuazhuグループ、また不動産開発者や観光プロジェクトの運営者としてSunacChinaホールディングスの名前を挙げていた。

 これに対し、MGMチャイナは、「取締役会は、この発表日現在、同社がリストラの計画を持っていないことを確認している」とし「同社株主とのコミュニケーションを継続し、株主や利害関係者の最善の利益のために会社を運営し、株主価値と会社の業績を向上させていく」、また「マカオにコミットし続けていく」と付け加えた。

 サンフォード・バーンスタイン社が1月11日に提出した資料での見立てでは、「もしMGMリゾーツがオンラインゲーミングの複合企業であるEntain社を買収し110億ドル(約1兆1,407億円)以上の取引をもってビジネスモデルを変革するとした場合、長期的にはMGMリゾーツがMGMチャイナの権益を売却する可能性はある」と述べていたが、その後、MGMリゾーツはEntain社買収の意向を撤回した。


●SJMホールディングス
 SJMホールディングス(SJM)は、2021年1月1日から、最高財務責任者(CFO)としてサンズ・チャイナの元幹部のベン・トー氏が就任することになった。なお、前任のマクベイン氏は、アドバイザーとして同社に留任する。トー氏は昨年10月に「最高執行責任者(財務・開発)」としてSJMグループに入社した。同氏は、2010年6月から2016年4月まではライバルのマカオカジノ運営会社、サンズ・チャイナでCFOを務め、長く執行副社長および執行役員も務めていた人物である。


●サンズ・チャイナ
 サンズ・チャイナは、1月21日、コタイ地区で開発を進める「英国」をテーマにした新IR施設「ザ・ロンドナー・マカオ」を、2月8日に第1フェーズとしてオープン予定であると発表した。プロジェクト費は19億ドル(約1,970億円)規模の投資と伝えられており、今年を通じて「段階的に」オープンする予定である。もうひとつのホテルである「ロンドナーコート」のスイートルームは今年後半にも完成する予定。親会社のラスベガス・サンズのブランドアンバサダーを務める英国の元サッカー選手デビッド・ベッカム氏が広告塔を務める。


2月オープン予定の「ザ・ロンドナー・マカオ」


●ギャラクシー・エンターテインメント
 ギャラクシーエンターテインメントは現在、コタイ地区のリゾート、ギャラクシー・マカオにおいてフェーズ3の工事を続けており、これは、11月に遅れが報告されているものの2021年後半に完成する予定である。

 また、テッド・チャンCOOは新年の挨拶で日本への意欲を改めて示した。


●ウィン・マカオ
 ウィン・マカオ内の日本料理専門店「Mizumi(泓)」、広東料理店「Wing Lei(永利軒)」、中国北方料理店「Golden Flower(京花軒)」、ウィン・パレス内の四川料理店「Sichuan Moon(川江月)」、が、1月27日発表の「ミシュランガイド香港マカオ」2021年版で、2つ星を獲得した。今回の2つ星獲得レストラン全6店のうち、4店がウィンのレストランであった。また、ウィン・パレス内の広東料理店「Wing Lei Palace(永利宮)」は、新たに1つ星を獲得した。 


●その他のカジノ関連会社
 マカオのライセンシーであるSJMホールディングス社との契約下で、マカオで3つのカジノを運営しているマカオ・レジェンド・デベロップメントは、同社のエグゼクティブ・ディレクターであるメリンダ・チャン・メイ・イー氏(同社所有一族の一人としても知られる)が、マカオ半島のウォーターフロントにあるマカオ・フィッシャーマンズワーフの新施設となる、レジェンデール・ホテルの詳細を「今年中に」公表する旨を伝えた。マカオレジェンドの創設者の妻でもある同氏は、新しい会場は当初の「一棟建て」の設計に比べて「より大きく」「より良く」なると語った。

 また、マカオ・レジェンド・ディベロップメントの最高経営責任者(CEO)として、12月にマカオのカジノジャンケットブランド「Tak Chun(タクチュン)」の代表であるレボ・チャン氏が就任した。