【新型コロナのIRへの影響レポート】ラスベガス 2021年1月26日版 (2/3)

二上葉子

ラスベガスのIR事業者の動き

●MGMリゾーツ
 MGMリゾーツは、1月7日、新たな最高財務責任者(CFO)としてジョナサン・ハルクヤードを任命した。ハルクヤード氏は、シーザーズ・エンターテインメントで13年間勤め、最近ではエクステンデット・ステイ・アメリカ社(ホテルグループ)とその不動産・REITを扱うESHホスピタリティ社で社長兼最高経営責任者を務めた上級企業幹部である。また、MGMリゾーツは、管理職約140人の従業員を解雇することを発表した。

 1月に入り、MGMリゾーツに対し、マカオ子会社であるMGMチャイナの株主より、MGMチャイナの株式20%を売却するよう求める公開状が出された。MGMチャイナは、「同社株主とのコミュニケーションを継続し、株主や利害関係者の最善の利益のために会社を運営し、株主価値と会社の業績を向上させていく」、また「マカオにコミットし続けていく」とコメントした。同じ時期に、MGMリゾーツは、英国のスポーツくじおよびiGaming会社でラッドブロークス(ヒルトンホテルブランドを所有する企業)のオーナーであるエンテイン社の買収を検討している報じられた。MGMの買収提案を受け、エンテイン社ではCEOのシェイ氏退任の決定がなされた。しかしその後、MGMは慎重な検討の結果、エンテイン社の買収を断念するに至った。買収は実行されないものの、MGMとエンテイン社とのBetMGMでの連携は継続する。

 MGMが注力しているオンラインベッティングやeスポーツ関連の動きが加速している。アメリカ国内のスポーツ・ベッティングサービスを急拡大しているMGM子会社のBetMGMは、1月5日にアイオワ州でのサービスをローンチ。全米ではネバダ州、ニュージャージー州、コロラド州、インディアナ州、ペンシルバニア州、テネシー州、ウェストバージニア州に加えて、州全体で合法の下、アプリによるスポーツ・ベッティングが利用できる8番目の州となった。

 eスポーツに関しては、MGMが運営するルクソール・カジノに併設するHyperXは、アライド・eスポーツ社との契約を更新すると発表。アライド・eスポーツ社は、HyperXアリーナのプロモーション、コンテンツ、ソーシャルメディアプラットフォームのすべてにおいて、引き続きブランディングとサイネージを提供していく。


HyperX Esports Arena HPより


●ラスベガス・サンズ
 ラスベガス・サンズとサンズ・チャイナの会長兼CEOであるシェルドン・アデルソン氏が1月11日の夜、87歳で亡くなった。カリフォルニア州の自宅で非ホジキンのリンパ腫癌の療養中だったという。ラスベガス・サンズとサンズ・チャイナは、1月7日時点で、会長兼CEOの役職を休職することを発表していた。両社の取締役会は、アデルソン氏が休職中の間、ラスベガス・サンズ社長兼最高執行責任者であるロバート・ゴールドスタイン氏を両組織の会長代行兼CEO代行に指名していた。その後、26日に、ゴールドスタイン氏を新会長兼CEOに任命したことを正式に発表した。ゴールドスタイン氏が務めていた社長兼COOには、新たにパトリック・デュモン氏が昇進、新最高財務責任者にはランディー・ハイザック氏が就任した。

 アデルソン氏の死去の直前、1月11日に、ラスベガス・サンズがスポーツ・ベッティング参入に向け協議中と報じられた。アデルソン氏は以前からオンライン・ベッティングに反対を示してきた中での報道であったが、今後、新しい体制のもと、事業開拓となるか、注目される。


●ウィン・リゾーツ
 ウィン・リゾーツは、1月7日、今年の第1四半期においてCEOのマドックス氏を含む上級管理職3名の給与カットにも言及した。自身の年間基本給は190万ドル(約1億9,703万円)にまで下がるという。

 ウィンのスポーツベッティングWynnBETは、1月21日現在、アメリカ8州(インディアナ、アイオワ、マサチューセッツ、ネバダ、オハイオ、コロラド、ニュージャージー)で展開している。まもなくミシガン州が追加になる予定で、テネシー州とバージニア州で免許を申請中である。2020年10月には、WynnBETはNASCARとの認定パートナーシップを発表しており、スポーツベッティング分野では拡大を続けている。


●シーザーズ・エンターテインメント
 ラスベガスのシーザーズ・パレス内に、新しくアートギャラリーの「パーク・ウエスト・ミュージアム&ギャラリー・ラスベガス」が新年早々グランドオープンした。7,000平方フィート(650平方メートル)の敷地に、サルバドール・ダリをはじめ、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックや、パブロ・ピカソなどの画家の作品を含む、1,000点以上の作品が常時展示される。

 また、シーザーズ・エンターテインメントは、ネバダ州リノにある「ザ・ロウ・リノ」のシルバー・レガシー・リゾート・カジノで4,700万ドル(約48.7億円)規模の改修工事を進めている。2021年夏までに完成する予定。2019年より改修を進めてきた1億ドル(約103.7億円)投資の一連のリノベーションプロジェクトを補完するものとなる。

 昨年から進んでいる、シーザーズによる、イギリスのスポーツベッティング大手ウィリアム・ヒル社の37億ドル(約3,804億円)規模の買収に関して、昨年末に連邦反トラスト法上の承認(HSR法)を得られる見込みと報じられた。この取引については「2020年11月19日にミシシッピ州ゲーミング委員会から、2020年12月16日にウェストバージニア州から承認を得ている」と述べている。さらに、英国高等裁判所の最終承認と、米国の他の機関からの行政上および取引完了の承認が必要となるが、同社は取引を完了させるのに必要なすべての規制当局の承認取得を進めており、2021年3月には合併を完了することを目指している。

 また、シーザーズのエルドラド・リゾートとの公開合併により、全米での同社の施設再編も進んでいる。インディアナ州でシーザーズが保有するホースシュー・サザン・インディアナ(Caesars Southern Indiana)を、ノースカロライナ州に本拠地を置くイースタン・バンド社(チェロキー族)に2億5,000万ドル(約257億円)で売却することで合意した。ルイジアナ州では、バリーズ社にエルドラド・シュリーブポートのカジノ物件を売却した。また、シーザーズが管理するラスベガスのリオ・ホテルの運営はスケープ・カンパニーズ社が行うことになったが、この新たな運営会社の役員について、1月に入り、ネバダ州ゲーミングコントロールボードは適性を承認した。スケープ・カンパニーズ社は2023年までにシーザーズから同施設を引き継ぐ見込みである。