マリーナベイ・サンズに新型コロナウイルス対策への取り組みを聞いた

JaIR編集部 写真●マリーナベイ・サンズ

 2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス(Covid-19)はIRのビジネスにも大きな影響を与えている。最新のCovid-19対策はどうなっているのか? シンガポールのマリーナベイ・サンズでのCovid-19対応についてリゾートオペレーション担当シニアバイスプレジデントのポール・タウン氏にメールでインタビューした。

ーマリーナベイ・サンズにおけるCovid-19対策について教えてください。

パンデミックが始まって以来、マリーナベイ・サンズは、より快適さと安心感をご提供し、お客様をお迎えできるよう、運営プロセスの再考と再設計に懸命に取り組んできました。可能な限りの技術革新を駆使し、新しい衛生、安全対策およびセーフガードを試み、そして実施してきました。私たちはお客様とチームメンバーの安全と健康を最重要視しており、当局と緊密に連携し、Covid19に関連するすべての政府の規制を遵守しています。

私たちのIR施設は、昨年4月に事業所内の部門別の環境公衆衛生面において高水準なコミットメントを達成する企業や組織に、シンガポール政府が授与する「SGクリーン品質マーク」に認定されています。また、8月には200年近い歴史を持つ試験・検査・認証の世界的リーダーであるビューローベリタス(BV)の厳しい認証プロセスを経て、高く評価され「SafeGuardTM Hygiene Excellence and Safety Label」認証を取得しました。同時に統合型リゾート(IR)全体で現地監査も実施しています。

ー各サイトにおいて特に実施された対策について、具体的に教えてください。

全施設で、実施されている対策の一部を紹介します。

ホテル

現在の会場の人数制限や安全な距離の取り方を考慮して、8月には、当ホテルの象徴であるインフィニティプールとバンヤンツリー・フィットネスクラブをご利用いただけるよう、新しい行列管理システムを導入しました。ご利用のお客様は、SMSで番号を登録するだけで、プールまたはフィットネスセンターのセッションを事前に予約することができます。ホテルの予約番号を用いてオンラインでプールのセッションを予約することが可能です。11月には、シンガポールのホスピタリティ施設では初となる、お客様のチェックイン時間を調整するキュー管理システムをホテルに導入しました。

また、最新の静電噴霧技術(Lufter EA-X3 misting machine)を使用して、衛生プロトコルを強化しています。チェックアウト後すべての部屋で、接触面や手の届きにくい場所も消毒します。帯電している噴霧は、病院グレードの除菌・消毒剤で包み込みこむことで、すべての表面を均一にコーティングし、より完全な衛生を可能にします。
最新の静電噴霧技術で衛生を保っている

ホテルでは可能な限り非接触型の支払いソリューションを推奨しており、お客様はチェックアウトの際は自身の部屋カードキーを、ロビーフロアに設置されたRFIDキー・リーダーが埋め込まれたチェックアウトボックスへ入れるという、非接触型のチェックアウトプロセスを提供しています。お客様がキーカードをチェックアウトボックスに入れると、名前と部屋番号を参照したのち、直ちにバックエンド処理の電子メールが送付されます。

サンズ・エクスポ&コンベンションセンター 

クライアントと協力して、オンサイトでの登録プロセスを再設計。キュー管理システム(待ち行列管理システム)を導入し、安全な距離を確保しています。

会議や宴会のためのセットアップは、安全な距離を守るために再構成されました。宴会のテーブルは、シンガポールにおいて一般的な食事人数制限である1テーブル5名に制限しています。また、セルフサービスのビュッフェは、リスクを最小限に抑えるために、セットランチやスタッフが提供するビュッフェに置き換えています。

共用部や高頻度接触面の清掃・消毒の頻度も高めています。すべての視聴覚機器は、使用の度に清掃と消毒が行われています。静電噴霧器はミーティングスペースやビジネスセンター、演壇、待合室、展示ホール、ロビーなどの共用部の消毒に使用されます。

手指消毒器は会議室、受付テーブル、休憩エリア、エレベーター内等各所に設置しています。安全管理措置の一環として、ハイブリッドイベント・トレードショーでの展示ブースとミーティングポッド用にプレキシガラスシールドを採用しています。
手指消毒器を各所に設置

アートサイエンス・ミュージアム

私たちは7月にミュージアムを再開したとき、人数制限(キャパシティ)管理システムであり、制御用のゲートキーピングシステムである「TallyFi」を導入しました。展示会場の入り口に配置して展示スペース内の収容人数を調整するようにミュージアム入り口にデジタルクリッカーを配置して施設全体の収容人数を調整します。TallyFiシステムを使用すると、ミュージアムのスペース内のキャパシティをリアルタイムで追跡できます。

共用スペースやカウンターやキオスクなどの高頻度接触面、備品の清掃・消毒の頻度を増やしました。共用スペース、すべての作品場所に手指消毒器を設置し、インタラクティブな展示には手袋を用意しています。各展覧会の収容人数は少ないため、来館前にオンラインでチケットを購入する事を、お勧めしています。

ショップ(ザ・ショップス アット マリーナ・ベイ・サンズ)

ザ・ショップスは、安全対策を強化して営業を再開していますが、新しく「クリック&デリバリー(オンラインの)」ショッピング・コンシェルジュを利用し、60以上の高級ブランドから商品を選ぶことができます。オンラインでのラグジュアリーショッピングが可能になりました。シンガポールの高級ショッピングモールでは初のサービスで、デジタルショッピング・コンシェルジュでは、シーズン最新アイテムを数百点取り揃え、シンガポール国内全域に無料でお届けしています。

私たちの小売店では、共用スペース、高頻度接触面、デジタルスクリーン、リフト、車椅子やベビーカーなどの貸し出し機器などのインタラクティブなコンポーネントの清掃と消毒の頻度を高めています。手指消毒器はスタッフやゲストがすぐに利用できるようになっています。
共用スペースの清掃と消毒の頻度を高めている

小売店では、顧客との接触を必要とする製品テスター、サンプルなどは撤去され、可能な限り電子決済や非接触型の支払いを提供することを推奨しています。

施設内、その他の場所

有名シェフのシグネチャーレストランではデジタル化を進め、お客様がQRコードをスキャンしてメニューを見ることができるようにしました。また、敷地内の一部では、エスカレーターにセルフクリーニング(滅菌)システムを導入し、ドアハンドル、手すり、リフトボタンなどの接触面積の多い部分は保護コーティングを施し、頻繁に貼り直しを行っています。
QRコードをスキャンすることでスマホからメニューを見られる
 
当社の安全衛生対策の詳細については、当社のウェブサイトをご覧ください。

-今のところ海外からの観光客はいないと思いますが、今後の観光客・出張者の動向の見通しについて教えてください。

昨年7月にホテルを再開して以来、シンガポール人やシンガポールに滞在するお客様からのホテルパッケージやレストラン予約が殺到しています。

現在の気運の中でも、観光業界にはチャンスがあるのは間違いありませんが、今のところは地元の方の観光が中心となっています。海外旅行ができない現地の人たちには、「発見ある体験を求めている」という需要があります。そのため、アートパス&サステナビリティツアーなど、ユニークな体験を盛り込んだ滞在型パッケージを用意しています。ツアー参加者には、シンガポール人が統合型リゾートを再発見するようなサステナビリティ・プラクティスについても学んでもらっています。

MICEの分野でも同様に、安全で責任ある方法でイベントや会議を開催したいという需要があります。マリーナベイ・サンズは10月以降、3度MICEの試験的イベントを成功裏に開催しており、シンガポール政府が求める安全管理措置を実施した上で、すべての参加者の健康と安全を確保する能力を実証しました。

シンガポールと海外の間で旅行緩和(Travel Bubbles)が形成されつつある中、2021年には海外旅行が徐々に再開されることで、ホスピタリティ業界に何らかの形で正常な状態が戻ってくることを期待しています。

マリーナベイ・サンズ
https://jp.marinabaysands.com/