ゲンティン・シンガポールが語る関西のIRを成功させる5つのポイントとは?

大谷イビサ(JaIR編集部)

 [関西]統合型リゾート産業展のオペレーター講演に登壇したのは、シンガポールのセントーサ島において統合型リゾート「リゾート・ワールド・セントーサ」を運営するゲンティン・シンガポール。大阪府市のIRのコンセプト募集にも応じた同社は、タン・ヒーテック社長と笠﨑七生常務執行役員が関西のIRを成功させる5つのポイントを語った。


ゲンティン・シンガポール 代表取締役社長 タン・ヒーテック氏


膨大な投資で成長を続けるリゾート・ワールド・セントーサ


 冒頭、ゲンティン・シンガポールのタン・ヒーテック氏は1990年代の日本との思い出について語る。「当時、私は紙のビジネスを手がけており、その取引先が大坂にありました。以来30年、私はさまざまな大坂の方とパートナーシップを組んできましたが、IRのビジネスにおいても、大坂とパートナーシップを築いていきたいと考えています」と語る。

 ヒーテック氏は、関西のIRを成功させるためのポイントとして「持続可能な統合型リゾートの開発を行なうこと」「魅力的な都市に変貌を遂げる原動力となること」「地元のコミュニティと長期的なパートナーシップを築くこと」「地元の労働力の質を高め、スキルアップさせること」「包括的な社会的セーフガードを実践すること」の5つを挙げた。

 こうしたポイントに対してゲンティンは、どのように応えてきたのか。ゲンティン・シンガポール 常務執行役員の笠﨑七生氏が日本語で語る。まず「持続可能な統合型リゾートの開発を行なうこと」に関しては1つのIRのモデルにこだわるのではなく、地元や周辺市場のニーズにあったユニークなものを作っていくことが重要だと。その点、グローバルで30年以上の実績を持つ同社は、世界各国でユニークな施設を作ってきた。そしてシンガポールにおいては、世界中の人を魅了する施設として包括的で完全なIR「リゾート・ワールド・セントーサ」を開発した。


セントーサ島の統合型リゾート「リゾート・ワールド・セントーサ」

 夢洲と同じ49haの敷地に建てられたリゾート・ワールド・セントーサは、ユニバーサルスタジオや世界最大級の水族館、ウォーターパークといったアトラクションのほか、6つのホテル、MICE・国際会議場、エンターテインメント、ガストロミーなどを揃えた。「まさに子どもから大人、そしてビジネス客までたくさんのお客様に楽しんでもらえる。平均滞在時間が1.5~3日を超える一大ディスティネーションとして高い評価を得ています」(笠﨑氏)。

 そして先日、このリゾート・ワールド・セントーサにおいては、初期投資の5割にあたる3700億円をかけた拡張工事が発表された。「持続可能なディスティネーション作りには、継続的な再投資のコミットメント、それを支える財務力が必要になるということ。世界中のお客様に来てもらうには、定期的に新しいコンテンツを紹介し、ここでしかできない体験を提供していくことが重要になります」(笠﨑氏)。拡張計画では、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールには、任天堂のスーパーマリオランドとミニオンズという新しいテーマゾーンが新設され、水族館も今の三倍に拡張される。


相互扶助を重んじる「カンポンスピリット」でコミュニティとともに歩む


 2番目の「魅力的な都市に変貌を遂げる原動力となること」は、まさにシンガポールが成し遂げてきたことだ。2010年、マリーナ・ベイ・サンズとリゾート・ワールド・セントーサという2箇所のIRがオープンして以来、シンガポールの観光産業は外国観光者数・観光収入ともにほぼ2倍にまで拡大した。2018年は1850万人の訪問客のうち約1/3がリゾート・ワールド・セントーサを訪れており、IRが観光産業の原動力になっていることが見て取れる。


真のデスティネーションは観光産業の成長の柱へ

 また、観光客だけではなく、ビジネスマンが訪れるようになったことで、国も活性化。「住みやすい」「働きやすい」「楽しみやすい」という都市のランキングは、2007年の24位から、2018年には9位にランクアップした。

 3つ目はコミュニティとの共存だ。もとよりゲンティン・シンガポールは「カンポンスピリット」という企業理念がある。「カンポン」とはシンガポールの現地語で「村」を意味しており、そこから「相互扶助の精神に基づき、コミュニティとともに歩む」という精神を表しているという。

 この精神に則り、同社は政府機関、1万3000人の従業員とその家族、セントーサ地区の240ものローカルコミュニティ、7000を超える地元企業、CSR活動でサポートしてきた4万人の住民などをすべてステークホルダーとしてとらえ、さまざまな形でエンゲージを保っているという。「たとえば、高齢者の住居に定期的に訪れ、住居の修繕やクリーニングを手がけたり、買い出しをお手伝いするボランティア活動をやっている」(笠﨑氏)。また、世界最大級の水族館を運営するオペレーターとして、海洋生物の研究や海岸の清掃、プラスチックのストローの利用廃止などの環境保護活動にも力を入れている。

 4つ目の「地元の労働力の質を高め、スキルアップさせること」は地元での雇用がテーマ。「IRが世界クラスのディストネーションとして成功するためには、ハードウェアだけではなく、人材というソフトウェアが充実していなければならない」(笠﨑氏)とのことで、リゾート・ワールド・セントーサでは開業1年前から従業員の教育を手がけてきた。地元のさまざまな機関と手を組んで特別なトレーニングを開発し、実践したことで、十分な準備ができた状態で開業できたという。提供されている職種は900を超え、新卒からベテラン、シニア人材まで幅広い層でキャリア開発を進めているという。


900種類の異なるタイプの職業を提供する

 とはいえ、日本と同じくシンガポールも人手不足に直面している。そのため、ゲンティン・シンガポールではヒューマンタッチが重視される現場で、オペレーションの見直しや自動化を推進しており、付加価値の高い業務にフォーカスできる体制を構築しているという。また、若いうちにIRの現場や事業に触れてもらえるよう、大卒や専門学校の学生を積極的にインターンとして迎えいれているとのことだ。「IRの幹部を育成プログラムには、日本からも10人ほどの研修生が入っており、シンガポールでオペレーションに携わり、ビジネスに関しても学んでいる」(笠﨑氏)とのことで、第2期生の募集もスタートさせるという。

 5つ目の「包括的な社会的セーフガードを実践すること」はIRでネガティブに捉えられるゲーミングに対する対応だ。ゲーミングを管理しつつ、IRとして成功を収めるためには厳格なレギュレーションの元、包括的な社会的セーフガードと依存症対策を実施する必要があるという。これに対してシンガポールでは2箇所のIRがオープンして以来、犯罪率や依存症率も減少。ゲンティン・シンガポールはカナダのレスポンシブルゲーミングカウンシル(RGC)の厳しい認定において、150施設でもっとも高い得点を獲得しているという。笠﨑氏は「実績を持ったオペレーターが責任を持って依存症対策を取り込みながら、事業を継続して、長期にわたって成功させていくことが重要になる」と語る。

 最後、タン・ヒーテック氏は、「信頼できるパートナーとなるべく、われわれはできることのすべてを行なって、長期的で安定的な成長をみなさまと作り上げたい。ここ大阪で素晴らしいパートナーシップを組ませてもらえることを楽しみにしています」と語り、セッションを終えた。

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