和歌山のIRに手を上げたフランスのIR事業者、大阪至近はむしろ有利

JaIR編集委員・玉置泰紀(KADOKAWA 2021年室)

5月16日(木)、17日(金)にコンラッド東京で開催された「第4回ジャパン・ゲーミング・コングレス」2日目、会場内では和歌山県が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)に名乗りを挙げたフランスのIR事業者「グループ・ルシアン・バリエール」のカジノ開発ディレクターであるジョナタン・ストロック氏が、公式ブランド大使に任命された俳優のジャン・レノ氏とともに記者会見を開いた。


グループ・ルシアン・バリエール カジノ開発ディレクター ジョナタン・ストロック氏、公式ブランド大使に任命された俳優のジャン・レノ氏


 

老舗のIR事業者はなぜ和歌山に絞ったのか?

バリエール社は1912年創業。フランスのIR業界では代表する老舗。創業家のバリエール家がフランスのドーヴィルに開業したのが最初だった。その精神は“Art de Vivre”(「アール ドゥ ヴィーヴル」。生き方の技法、暮らしの芸術みたいな意味)。現在はフランス、スイス、エジプトなどに、カジノ34軒、高級ホテル18軒、120軒以上のレストラン・バーを経営している。

「なぜ和歌山なのか」という問いに対して、ストロック氏は、「日本中の候補地を回ったが、アクセスの良さ、労働力、教育環境などの要素を考えて、早い時期から和歌山に絞った」と答え、「観光学部のある和歌山大学、サプライヤー、サポーター、トレーニング人材、関西空港などさまざまな条件が揃っている」と説明する。

さらに記者の「有力な候補地、大阪が近いのは大丈夫か」との問いに対しては、「まったく問題ない。むしろ有利である。シンガポールやマカオを観ても分かるように観光地としては選択肢が多いほうが魅力的だ。大阪とは性質もまったく異なり、パンダはもちろん、高野山や熊野古道と言う歴史がある精神的な土地やマグロなど豊かな食文化など、他にはない魅力があり、大阪と補完しあいながら手に手をとって盛り上げて行きたい」(ストロック氏)と話した。

ジャン・レノ氏は「驚いたことに、早いもので、日本との付き合いは25年以上、四半世紀にもなる。バリエール家との付き合いも20年以上。今回、僕はただニコニコ笑って同席するだけのつもりはない。経済的な面や観光面、社会的な要請などと同様に重要な側面として”文化”があると思うが、この分野で貢献したい。演劇や映画やさまざまな文化は出会いの場になると思うが、私自身が一人芝居をしてみたり、日本のアーティストたちとの架け橋になったりできると思う。微力ながら、謙虚な気持ちを忘れず、貢献して行きたい」と、熱く語った。

質疑では投資規模を聞かれて、ストロック氏は、「流動的で、つねに調整をしていくが、ざっくりしたイメージでは25億USドル」と説明。また、タイムラインは「2021年に最終ライセンスが出て、建築に3年をかけて2024年に開業をイメージしている」と話した。