IRの基本方針策定・公表見送り 今後への影響は!?

JaIR編集委員・玉置泰紀


 7月26日までに、特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)の附則に期限が明示されていた第二章第五条・基本方針の策定・公布が行われなかった。IR整備法は2018年7月26日に公布されており、基本方針決定の期日が、公布から2年を超えない、と附則に明記されていることから、この日が期限だった。この基本方針に沿って、各自治体は既に遅れつつあるRFPなどを進める予定だっただけに、7~8月に予定されている自治体のプランは見直しが検討されるかもしれない。


IRの開業スケジュールは確実に後ろ倒しに


 2019年11月に基本方針(案)は発表されており、これまでに、かなり詳細な日本型IRの概要は示されていることから、クリアされているという解釈かもしれない。しかし、案ではなく基本方針自体は早急に明示されなければならない。仕切り直しの全体的なスケジュールの再提示が必要だ。

 各自治体は、基本方針策定を受けて、募集要項を固め、それぞれ事業者(コンソーシアム)を選び、政府に対して認定申請するという段取りだが、遅くとも7月26日までには策定されるとみられていたものが事実上延期になったため、来年の認定申請期間2021年1月4日~7月30日にも影響してくる可能性が出てきた。仮に、この受付期間が変わらなければ、基本方針の策定・公表の遅れにより、認定申請の準備期間が短くなり、事業者や自治体への負荷が増していく。

 そもそも、国土交通省は基本方針の策定・公表を1月中に行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で3~4月に一度延期されており、今回、デッドラインと見られていた7月26日を過ぎたのが現状。本来は、今年1月に発足したカジノ管理委員会がカジノ管理委員会規則を整備し、免許ライセンスやカジノで可能なゲームの種類、クレジット制度などの運営ルールを決め、これに基づき、政府のIR推進本部が決定する。ところが、コロナ禍で海外事業者が本国に戻り、連絡、打ち合わせもリモートで進めざるを得なくなっており、加えて、ラスベガスやマカオ、シンガポールのIR事業が深刻なダメージを受けていることによる資金調達への影響や、秋元司議員が、統合型リゾートをめぐる汚職事件の収賄容疑で逮捕され信頼を揺るがす事案もあり、当面延期になった、とみられる。  

  各自治体もすでに、この事態を織り込んで動き始めており、大阪府・大阪市IR推進局は6月23日、令和2年(2020年)7月頃としていた提案審査書類(RFP)の提出期限について、「現時点において国の基本方針が策定されていない」ことと、「新型コロナウイルス感染症の影響を見極めていく必要があること」等を踏まえて、「当面の間延長する」ことを発表した。具体的な提案審査書類の提出期限については、国の基本方針の策定後に、「その内容及び新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ」決定する、としている。

 新型コロナウイルス対策に集中している政府の中では、現状IR関連の施策の優先順位は決して高くなく、世論の動向も注視する必要がある。また、観光、インバウンドは大きく見直しの時期に入っており、特に、IRの目玉である大型施設のMICEやホテル、アリーナなどは影響が大きく、ニューノーマルの中での運営方針を手探りしているところだ。

以下は、特定複合観光施設区域整備計画法(IR整備法)第二章第一節から(基本方針)についての内容

 第五条 国土交通大臣は、特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針
              (以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

 2 基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
    特定複合観光施設区域の整備の意義及び目標に関する事項
    特定複合観光施設区域の整備の推進に関する施策に関する基本的な事項
    設置運営事業等(設置運営事業又は、施設供用事業が行われる場合には 設置運営事業及び
             施設供用事業をいう。以下この章において同じ。)及び設置運営事業者等(設置運営事業者
             又は、施設供用事業が行われる場合には設置運営事業者及び施設供用事業者をいう。
             以下この節において同じ。)に関する基本的な事項
    区域整備計画の認定に関する基本的な事項
    前各号に掲げるもののほか、カジノ事業の収益を活用して地域の創意工夫及び民間の活力を
             生かした特定複合観光施設区域の整備を推進することにより我が国において国際競争力の
             高い魅力ある滞在型観光を実現するための施策に関する基本的な事項
   六 カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策に関する
             基本的な事項

  国土交通大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、
           特定複合観光施設区域整備推進本部の決定を経なければならない。

  国土交通大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

  前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
 
 
■関連記事
 
【新型コロナのIRへの影響レポート】日本 7月10日版 (1/2)
https://jair.report/article/373/