<IR用語集・基礎知識> フィリピン

JaIR編集部

7,109の島々で構成され、日本の約8割にあたる299,404㎢の面積を有するフィリピン共和国。人口は2014年に1億人を突破。政情不安、治安の悪さといった先入観が定着しているが、近代的なビルが立ち並ぶ活気みなぎる急成長国でもある。内戦後の復興や貧富の格差など課題は多いものの、国民の平均年齢は24歳と若く、人口も今後数十年に渡って増え続ける見通しとなっており、堅実に経済成長率を伸ばしている。
 
第二次世界大戦後、国内に違法カジノが乱立した。政府は、これら違法カジノの一掃、さらに公営カジノを運営して国の収益を獲得するため、1976年、政府管理下のカジノ規制・運営会社「フィリピン娯楽賭博公社」(PAGCOR)を設立する。以降、同社が独占運営権を持ち、多数の小~中規模カジノを営業してきたが、2017年にはカジノの規制業務に集中するとして、直営17か所と民間との合弁事業などによる46か所の施設を民間に売却することを発表。しかし、同社が生み出すゲーミング収益が拡大していることから、売却は2018年に無期限保留となった。

一方で、国際競争に備えるべく、従来のPAGCORの枠組みとは別に、各事業者にライセンスを付与して運営させる形を進める。その代表的な形がマニラのニノイ・アキノ国際空港から西に4キロほどの場所、マニラ湾岸を埋め立てた約800ヘクタールの広大な敷地を用地とする「Entertainment City Manila」だ。この場所はアジア最大のショッピングモールとされる「SMモール・オブ・アジア」を中心とした商業エリアに隣接しており、2002年の計画立案から開発を進めてきた結果、両エリアを併せて新しい時代に向けて急成長するフィリピンの象徴的な最先端の存在となっている。
 
同エリアでは、「ソレア・リゾート&カジノ」(2013年開業、ブルームベリー・リゾーツ運営)、「シティ・オブ・ドリームス・マニラ」(2014年開業、メルコリゾーツ&エンターテインメント運営)、「オカダ・マニラ」(2017年開業、日本のユニバーサルエンターテインメント子会社・タイガーリゾート運営)の3つの大型IRが稼働している。これに先立ち、2009年に空港エリアに同じくライセンス形式でオープンしていた「リゾートワールドマニラ」(フィリピンのアライアンス・グローバル・グループと、ゲンティン香港のJVであるトラベラーズ・インターナショナル・ホテルグループが運営)を含めた4つのIRを、マニラの国際IRとして強力に押し出している。なお、フィリピンでは一部の外国人専用カジノを除き、全ての施設で21歳以上の自国民および外国人が入場無料でカジノを楽しむことができる。

セブ州マクタン島ラプラプ市、マンダウエ市でも、新規IRの開発が進められており、全体としてシンガポールを超える位置を狙うとしている。しかしながら、政府はカジノ業界の飽和状態を危惧し、PAGCORに新規のカジノライセンス発行の禁止を発令。ロドリゴ・デュテルテ大統領が任期満了となる2022年まで続くとみられており、2022年以降の政府の方針は今後も様子見となっている。
 
(2020年8月6日更新)