【新型コロナのIRへの影響レポート】ラスベガス 6月5日版 (1/2)

二上葉子

 世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、ここに来てようやく制限の緩和が始まっている。日本型IRビジネスレポート(JaIR)では、IRがある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を配信。今回はラスベガスの最新状況をレポートする。

 

6月4日にカジノ再開、ラスベガス景気回復の希望に

 ネバダ州では新型コロナウィルス感染拡大の影響により、3月18日から219の商業カジノ施設を閉鎖していたが、ネバダ州知事からのゲーミング業界再開に関する発表を受けて、現地時間6月4日、カジノ施設を再開した。アメリカ国内ではすでに13州でカジノが再開し、ネバダ州は最も遅い州の一つであった。

ラスベガス・ストリップ地区。78日間の沈黙を破り、カジノ再開


 6月4日に再開したラスベガスの主なIR・カジノ施設は、シーザーズ運営のシーザーズ・パレスとフラミンゴ・ラスベガス、ウィン運営のウィンとアンコール、MGM運営のベラージオ、ニューヨーク・ニューヨーク、MGMグランド、ザ・シグネチャー、ラスベガス・サンズのベネチアン、ボイドゲーミング運営の9施設、その他ザ・コスモポリタン、プラザホテル・アンド・カジノなど。州内のカジノの約5分の3に相当する133のカジノが営業を開始した。

 当日、0時1分からカジノが再開しはじめ、朝10時以降には大手事業者の運営する施設など多くのカジノがオープンした。目抜き通りのストリップ地区にある大手カジノ事業者運営のベラージオやシーザーズ・パレスなどではホテル正面入り口で、CEOや従業員らが初日に詰めかけた客を出迎えた。ストリップ地区を象徴するMGMベラージオ前の噴水ショーも同日よりスタート。主要産業が観光業のラスベガスでは新型コロナウィルスにより大打撃を受け、6月4日時点ではラスベガスはアメリカ国内のどの都市圏よりも高い失業率28.8%であったが、街の生命線であるカジノ再開は明るい兆しである。

 

感染防止対策の徹底、カジノフロアでは社会的な距離を維持

 再開にあたって各施設では新型コロナウィルス感染防止対策が十分になされた。ネバダ州規制当局はカジノ再開ガイドラインを作成。カジノへの入場人数制限(消防法に記載されている定員の50%に制限)、マスクの着用などを各事業者に義務付け、事前に事業者を集めたワークショップを開催してルールの説明をおこなった。再開直前にもガイドラインが更新され、検温の基準温度「華氏100.4度(38℃)」以上は入場不可の項目も追記された。

 再開前、MGM、シーザーズ、ボイドのカジノ大手3社は、大学医療センターと提携し、共同で従業員の新型コロナウィルス検査を実施。ラスベガス・コンベンションセンターでの検査を予約し、結果は48時間以内に通知される。陽性の場合は従業員と南ネバダ保健地区にも結果が送られ、接触の追跡が行われる仕組みで、1日あたり10,000件の検査が可能な体制を整えた。それ以外の各事業者も従業員の検査をおこない、再開日を迎えた。

シーザーズのHPでは、感染症対策について紹介
 
 
 4日に再開された各施設では、入口での検温実施、消毒液設置、マスク着用、プレキシシートの設置、非接触でのチェックインなどの対策がなされた。カジノフロアではテーブルの人数が制限、スロットマシンの一部は取り払われるなど社会的な距離の維持が基本となった。フロア内の滞在者数は定員の50%を超えないよう、定期的に客数をカウント。ウィンでは、顧客が混雑しがちな人気ゲーム、ポーカーの提供を見送るという発表もあった。施設のレストランでも対策がなされ、例えばMGMのベラージオのレストランでは、QRコードを用いたオーダーが導入された。現地報道によると、訪問者は感染防止のプロトコルに戸惑いを感じつつも、施設の感染症対策を評価する声が多かった。

 カジノ再開初日は、施設は稼働率を抑えた部分的な再開で、顧客の戻りは完全ではないが、各事業者は手ごたえを感じたようだ。シーザーズは、「ラスベガス・ストリップ地区を訪れる顧客の需要は、予想をはるかに上回るものだった」とコメント。ウィン・リゾート広報担当者マイケル・ウィーバーは、ウィン・ラスベガスとアンコールの稼働率についてコメントは避けたが、「需要は現在の予想と一致している」と述べた。

 ネバダ州リゾート協会のバージニア・バレンタイン会長は、「一部のニュースでは、当初考えられていたよりも多くの部屋が予約されている可能性があることを示している。再開には非常にポジティブな反応がありそうだ」と発言。IR事業者が再開初週の予約について楽観的であり、再開へ安堵していることを述べた。