IRに関連する建設系のお仕事をされていて個人的にもカジノが大好き、ということであわせて90回以上もIR関連施設を見て来たというエキスパートの方にお話を聞くことができた。今回は完全にプライベートなご旅行ながら、ご本人も初めて訪れたというオーストラリアのタスマニア島でのカジノ体験と、オーストラリアにこそ日本型IRが見習うべきヒントがたくさんある……というお話。匿名という条件ながらJaIRでの公開を許諾していただいた。
――今回タスマニアに行ったきっかけを教えてください。
きっかけはマスタードなんです。香港人の親友がシドニーに移住したのですが、去年来日したときにタスマニアのマスタードをもらいました。「パンにつけて食べてみなよ」と言われたので、言われたとおりに食べてみたら、衝撃的においしかったんです。辛いわけではないので、日本人が考えるマスタードとはけっこう違うと思います。
それをきっかけにタスマニアについて調べ始めたのですが、南極が近くて、世界で一番水と空気がきれい、という情報が出てきました。水と空気がきれいなので、農作物や海産物、乳製品などがことごとくおいしいとのこと。それで妻にタスマニアに行こうと持ちかけて、さっきのオーストラリアに移住した友人といっしょに行くことになりました。
――タスマニアまではどんな旅程なんですか?
日本からは10時間くらいかけてメルボルンに行って、空港の近くで一泊して、次の日にヴァージンエアーでタスマニアまで1時間ちょっと。一番の大きなホバートというまちの近くの空港に降り立ったのですが、とにかく空気がきれいなので、めちゃくちゃ遠くまで見えました。日差しは厳しいのですが、気温も25度くらいでちょうどよかったです。
島内はレンタカーで回って、港のレストランでクラムチャウダーや牡蠣、チーズを堪能したり、いろいろなワインセラーでワインを楽しみました。タスマニアのワインはオーストラリアでも有名らしいです。オーストラリア人のプロギャンブラーが建てたMONA(Museum of Old and New Art)という現代美術館も中にワインバーが有ったり、洞窟探検みたいで素晴らしいです。
――タスマニアではいわゆるIRに泊まったんですか?
IRという規模の施設は無いのですが、僕の仕事を知っている友人が1973年にオープンしたオーストラリアでもっとも古いカジノを擁するレストポイント(WREST POINT)というホテルをとってくれました。200~300程度の客室しかない海に面した小さなホテルで、毎朝海鳥たちが庭にやって来たり、大都会に疲れた人がちょっと休むみたいな感じです。年老いた老夫婦が多くて、気張った感じがなくてレトロでした。とにかく時間の流れがゆっくりで、自然の豊かさを感じました。
――そんなところにカジノがあるんですか?
小さいですが、テーブルもスロットマシンもありますよ。温泉ホテルのゲームセンターみたいな感じです(笑)。昼は妻につきあって、夜は「ちょっと仕事に行ってくる」とカジノに遊びに行きました。
普通カジノって24時間営業なんですが、ホバートのカジノは営業時間があるんです。つまり、やっていない時間があります。朝9時から深夜2時までで、テーブルゲームは午後2時以降。従業員もきちんと寝るので、健全なんです。こういう場所でカジノに触れると、本来の意味を感じることができます。
――次にオーストアリア全体のIR事情について教えてください。
シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、ゴールドコーストなど全部で10以上はあるはずです。基本的には1都市・1オペレーターが手がけていますが、最近シドニーではクラウンが2つ目のIRを建てていますね。
――やっぱりシドニーが大きいんですか?
シドニーも大きいですが、一番大きいのはメルボルンのIRです。メルボルンのクラウンにはオーストラリアどころか、南半球最大規模のカジノがありますからね。クラウンはまちの中心地でヤラリバーという川沿いにあり、タワーとメトロポールという2つの5つ星ホテルと、プロムナードというリーズナブルながら4つ星のホテルが用意されています。どこもとてもいいホテルです。道を隔てて反対側には巨大なMICEがあります。
――タスマニアと違って本格的なIRですね。
メルボルンはオーストラリアで2番目の都市なんですが、もうすぐ人口がシドニーを抜くと言われています。
オーストラリアのまちは基本的に200年程度しか歴史を持っていないのですが、シドニーとメルボルンはずいぶんキャラクターが異なります。行った人はわかると思いますが、メルボルンは芸術と文化のまち。シドニーと比べると、メルボルンは刺激があります。
――人口だけ見ると、シドニーが東京で、メルボルンは横浜みたいな感じでしょうか。
そうですね。ベイエリアですが、大阪みたいに泥臭くないです(笑)。スタイリッシュという点でも横浜の方が近いです。
――オーストラリアのIRの印象はどうですか?
私もいろいろなIRやカジノを見てきましたが、オーストラリアが一番好きです。日本のIRも、オーストラリアのIRのようになってほしいと思います。
たとえば、最近のマカオはタイパ地区ではファミリー対応を前面に出したソフト路線を打ち出していますが、旧市街に古くからあるカジノは、人生をかけて博打をやっているみたいな人が多く、鉄火場のイメージを強く感じます。特にマカオは賭け金のレートも他の場所よりも高めなので、それだけ気持ちも入るのでしょうが……。ラスベガスも新旧が混在しているので、場所によっては場末感を感じます。品のいい人が集まっている雰囲気を感じる場所は意外と少ない印象があります。
それに対してオーストラリアのカジノでは、品がないと思ったことがないんです。ヨーロッパ系とも違うフレンドリーな上品さを感じます。先ほど話したような老夫婦が「あなた、また負けちゃったの?ダメね~」とか言いながら、明るく楽しんでいるんです。あと、これは国民性かもしれないのだけれど、日本人の僕にも、みんなが喜んで応援したり祝福してくれます。そこにコミュニケーションが生まれるんです。
なにより素晴らしいと感じるのは週末や大きなスポーツイベントのある期間です。こんな時のオーストラリアのIRは、老若男女が着飾って出かけるデートの場所になります。若い男女がお互い知り合う場所であり、家族の団らんの場であり、夫婦が会話を楽しむ場所になっています。
――ゲーミングゾーンではどんな遊びをしているのですか?
オーストラリアはスロット、ルーレット、スポーツベッティング、ポーカーが多い印象です。マカオで9割を占めるバカラは1割も有りません。
メルボルンはフロア1つの50テーブルくらいがポーカーです。ポーカーもカリビアンスタッドやテキサスホールデム始め、さまざまな種類があります。客同士が戦う場合もありますし、ハウスと戦う場合もあります。ビンゴみたいな数字遊びのKENO(キノ)も、オーストラリアでは人気があるようです。
――ノン・ゲーミングエリアはどんな感じでしょうか?
もちろん、ゲーミングゾーンには怪しい人や未成年は入れませんが、ゲーミングと、クラブ、レストラン、バーなどは一通りつながって設置されています。なによりオーストラリアはスポーツ・ベッティングが大好きなので、ワールドカップのときもスーツとドレスでスポーツバーの巨大なスクリーンで盛り上がっていました。
ベッティングする人もいるし、観戦だけしている人もいます。みんなが出かけていって、お酒を飲みながら仲間とさわぐ場所、楽しむ場所に変わるんです。ゲームをやっている人は半分もいない。要するに賭け事が主体じゃないんです。マカオやラスベガスと違うオーストラリアのIRの個性ですね。
――同じIRでも国や地域でずいぶん違うんですね。
だから、日本のIRもああなってほしいなと。カジノもおじさんたちが血眼で賭けをする場所ではなく、カップルや家族、友達同士で楽しむためのエンターテイメントの1つになるといいなと思います。
タスマニアのIRは「温泉ホテルのゲームコーナー」?
――今回タスマニアに行ったきっかけを教えてください。
きっかけはマスタードなんです。香港人の親友がシドニーに移住したのですが、去年来日したときにタスマニアのマスタードをもらいました。「パンにつけて食べてみなよ」と言われたので、言われたとおりに食べてみたら、衝撃的においしかったんです。辛いわけではないので、日本人が考えるマスタードとはけっこう違うと思います。
それをきっかけにタスマニアについて調べ始めたのですが、南極が近くて、世界で一番水と空気がきれい、という情報が出てきました。水と空気がきれいなので、農作物や海産物、乳製品などがことごとくおいしいとのこと。それで妻にタスマニアに行こうと持ちかけて、さっきのオーストラリアに移住した友人といっしょに行くことになりました。
――タスマニアまではどんな旅程なんですか?
日本からは10時間くらいかけてメルボルンに行って、空港の近くで一泊して、次の日にヴァージンエアーでタスマニアまで1時間ちょっと。一番の大きなホバートというまちの近くの空港に降り立ったのですが、とにかく空気がきれいなので、めちゃくちゃ遠くまで見えました。日差しは厳しいのですが、気温も25度くらいでちょうどよかったです。
島内はレンタカーで回って、港のレストランでクラムチャウダーや牡蠣、チーズを堪能したり、いろいろなワインセラーでワインを楽しみました。タスマニアのワインはオーストラリアでも有名らしいです。オーストラリア人のプロギャンブラーが建てたMONA(Museum of Old and New Art)という現代美術館も中にワインバーが有ったり、洞窟探検みたいで素晴らしいです。
――タスマニアではいわゆるIRに泊まったんですか?
IRという規模の施設は無いのですが、僕の仕事を知っている友人が1973年にオープンしたオーストラリアでもっとも古いカジノを擁するレストポイント(WREST POINT)というホテルをとってくれました。200~300程度の客室しかない海に面した小さなホテルで、毎朝海鳥たちが庭にやって来たり、大都会に疲れた人がちょっと休むみたいな感じです。年老いた老夫婦が多くて、気張った感じがなくてレトロでした。とにかく時間の流れがゆっくりで、自然の豊かさを感じました。
小さいですが、テーブルもスロットマシンもありますよ。温泉ホテルのゲームセンターみたいな感じです(笑)。昼は妻につきあって、夜は「ちょっと仕事に行ってくる」とカジノに遊びに行きました。
普通カジノって24時間営業なんですが、ホバートのカジノは営業時間があるんです。つまり、やっていない時間があります。朝9時から深夜2時までで、テーブルゲームは午後2時以降。従業員もきちんと寝るので、健全なんです。こういう場所でカジノに触れると、本来の意味を感じることができます。
鉄火場感の高いマカオと対照的なオーストラリア
――次にオーストアリア全体のIR事情について教えてください。
シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、ゴールドコーストなど全部で10以上はあるはずです。基本的には1都市・1オペレーターが手がけていますが、最近シドニーではクラウンが2つ目のIRを建てていますね。
――やっぱりシドニーが大きいんですか?
シドニーも大きいですが、一番大きいのはメルボルンのIRです。メルボルンのクラウンにはオーストラリアどころか、南半球最大規模のカジノがありますからね。クラウンはまちの中心地でヤラリバーという川沿いにあり、タワーとメトロポールという2つの5つ星ホテルと、プロムナードというリーズナブルながら4つ星のホテルが用意されています。どこもとてもいいホテルです。道を隔てて反対側には巨大なMICEがあります。
――タスマニアと違って本格的なIRですね。
メルボルンはオーストラリアで2番目の都市なんですが、もうすぐ人口がシドニーを抜くと言われています。
オーストラリアのまちは基本的に200年程度しか歴史を持っていないのですが、シドニーとメルボルンはずいぶんキャラクターが異なります。行った人はわかると思いますが、メルボルンは芸術と文化のまち。シドニーと比べると、メルボルンは刺激があります。
――人口だけ見ると、シドニーが東京で、メルボルンは横浜みたいな感じでしょうか。
そうですね。ベイエリアですが、大阪みたいに泥臭くないです(笑)。スタイリッシュという点でも横浜の方が近いです。
――オーストラリアのIRの印象はどうですか?
私もいろいろなIRやカジノを見てきましたが、オーストラリアが一番好きです。日本のIRも、オーストラリアのIRのようになってほしいと思います。
たとえば、最近のマカオはタイパ地区ではファミリー対応を前面に出したソフト路線を打ち出していますが、旧市街に古くからあるカジノは、人生をかけて博打をやっているみたいな人が多く、鉄火場のイメージを強く感じます。特にマカオは賭け金のレートも他の場所よりも高めなので、それだけ気持ちも入るのでしょうが……。ラスベガスも新旧が混在しているので、場所によっては場末感を感じます。品のいい人が集まっている雰囲気を感じる場所は意外と少ない印象があります。
それに対してオーストラリアのカジノでは、品がないと思ったことがないんです。ヨーロッパ系とも違うフレンドリーな上品さを感じます。先ほど話したような老夫婦が「あなた、また負けちゃったの?ダメね~」とか言いながら、明るく楽しんでいるんです。あと、これは国民性かもしれないのだけれど、日本人の僕にも、みんなが喜んで応援したり祝福してくれます。そこにコミュニケーションが生まれるんです。
なにより素晴らしいと感じるのは週末や大きなスポーツイベントのある期間です。こんな時のオーストラリアのIRは、老若男女が着飾って出かけるデートの場所になります。若い男女がお互い知り合う場所であり、家族の団らんの場であり、夫婦が会話を楽しむ場所になっています。
オーストラリアのIRは賭けごとが主体ではない
――ゲーミングゾーンではどんな遊びをしているのですか?
オーストラリアはスロット、ルーレット、スポーツベッティング、ポーカーが多い印象です。マカオで9割を占めるバカラは1割も有りません。
メルボルンはフロア1つの50テーブルくらいがポーカーです。ポーカーもカリビアンスタッドやテキサスホールデム始め、さまざまな種類があります。客同士が戦う場合もありますし、ハウスと戦う場合もあります。ビンゴみたいな数字遊びのKENO(キノ)も、オーストラリアでは人気があるようです。
――ノン・ゲーミングエリアはどんな感じでしょうか?
もちろん、ゲーミングゾーンには怪しい人や未成年は入れませんが、ゲーミングと、クラブ、レストラン、バーなどは一通りつながって設置されています。なによりオーストラリアはスポーツ・ベッティングが大好きなので、ワールドカップのときもスーツとドレスでスポーツバーの巨大なスクリーンで盛り上がっていました。
――同じIRでも国や地域でずいぶん違うんですね。
だから、日本のIRもああなってほしいなと。カジノもおじさんたちが血眼で賭けをする場所ではなく、カップルや家族、友達同士で楽しむためのエンターテイメントの1つになるといいなと思います。