1月29日にパシフィコ横浜で開催された「横浜 統合型リゾート産業展」に登壇したのは、横浜市副市長の平原敏英氏。日本と横浜の課題を説明した平原氏は、横浜がなぜIR誘致を進めているのかを説明。世界に認められる健全なIRを作るという覚悟を聴衆にアピールした。
具体的には、訪日旅行観光客を2020年までに4000万人、2030年までに6000万人に引き上げ、消費額も2016年の3.2兆円から2030年までに15兆円にまで伸ばすという計画を掲げる。実際、GDPが横ばいという中、輸出用機械とともにトップクラスの成長産業として注目を集めているのが観光分野で、特にインバウンド消費はまだまだ伸びしろが大きいという。
次に説明したのは、横浜市の課題だ。まず観光面では、約8割が日帰り観光で、訪日外国人の宿泊者数が全国の伸び率より低いという課題を抱える。また、自治体の課題としては、2019年をピークに横浜市の人口は減少に転じており、45年後には生産年齢人口がいまの2/3にまで落ち込むという。一方で高齢化により、老年人口は増大し、それとともに社会保障費は膨らむことになる。
特にインフラの維持・保守は喫緊の課題になるという。横浜市が管理している道路は7600kmにおよんでおり、高度成長時代のベッドタウン化とともに増やした小中学校がちょうど立て替えの時期がさしかかっている。また、昨今の台風のような大規模な災害に対する対応も重要だ。
しかし、これを支える横浜市の財政は厳しく、人口減少によって税収の半分を占める個人市民税が減るのに加え、上場企業が少なく、法人税が23区の1/14ということもあり、法人税の増加も難しい。将来を安心・安全を担う自治体としては、財政面で大きな危機が訪れているのが現状だ。
また、2000年代の副都心構想を踏まえ、平原氏は「かつて横浜は、ビジネスの分野で東京と肩を並べようとした時期もありました。でも、東京に勝てないことはわかってきています。であれば、伸びしろのありそうな観光・MICEの分野の中心としてIRを実現したい」とコメントした。
横浜市が求めるIRはシンガポールのIRをモデルとし、MICE、ホテル、レストラン、ショッピングモール、エンターテインメント施設、そしてカジノを組み合わせた施設を作るという計画。敷地は47haにおよぶ山下ふ頭で、羽田空港から首都高湾岸線で30分かからず着くという。平原氏は、横浜に存在しない5つ星ホテルまで含めた各種宿泊施設や、市民が無料で楽しめるオープンスペースなどにも高い期待を寄せた。「日本と言えば、横浜。横浜のIRに行ってみたいと思ってもらえるようにしたい」と語る。
経済効果としては、観光振興としてまず訪問者数2000~4000万人/年、IR区域内での消費額は4500~7400億円を見込む。市内企業への発注の促進や観光客の回遊により、地域経済への振興も見込まれ、経済波及効果で7500億~1兆2000億円(建築時)、間接効果まで含めた雇用創出効果は7万7000~12万7000人を見込んでいる。当然、市の財政にも大きなメリットがあり、820億~1200億円の税収増が想定されている。
平原氏は、横浜でのIRの実現に向けた3つの考えとして、「横浜市民が誰でも楽しめる世界水準のリゾート施設を実現」「市内の観光・産業のあらゆる資源を活用して、地域一体型の観光振興を図り、経済活性化に貢献」「依存症・治安対策、事業継続など、徹底したリスク対策」を挙げる。
今後の進め方については、昨年度に発表された実施方針に基づき今年度中には事業者公募と選定を実施。選定事業者と市で作成した区域整備計画を2021年度に提出し、国が決める3つの地域に残りたいという。また、現在は各区で市民説明会を開催しており、現在10区まで終えている。
今回の平原氏の内容は、おおむね横浜市が公式な説明の最新版という印象だったが、最後にアピールしたのは、まだまだ反対意見の多い市民に向けた正しい情報の重要性だ。平原氏は、「IRはどこに行くにもカジノを通らなければならない」「地元には還元がない」「カジノでATMやカジノでお金が引き出せる」などと書かれたIR関連の記事について、あまりにも事実がねじ曲げられていると批判する。
「『飲む・打つ・買う』がセットで、売春婦がいるなんて、あまりにも突拍子もない意見。こうした事実があれば、自治体やカジノ管理委員会がきっちり管理して、免許を取り消すこともできる。世界に認めていただける健全なIR施設を横浜に作っていく覚悟」と語り、IR誘致の思いをアピールした。
講演中、ヘルメットを付けた参加者が登壇者の前で「カジノは要らない」と抗議し、係員に促されて退場する場面もあった。
■関連サイト
IR(統合型リゾート)(横浜市)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/
横浜の課題を解決する施策の1つがIR
登壇した平原氏は、横浜のIR推進協議会やイベント関係者に謝辞を述べた後、統合型リゾートの前提となる日本の現状について説明。世界全体に占める日本の名目GDPは2000年の14.4%から2017円には6.1%に大きく減少し、国際競争力が落ちていると指摘した これに対して日本政府は2016年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」を出し、GDP600兆円を実現するための柱として観光を位置づけている。具体的には、訪日旅行観光客を2020年までに4000万人、2030年までに6000万人に引き上げ、消費額も2016年の3.2兆円から2030年までに15兆円にまで伸ばすという計画を掲げる。実際、GDPが横ばいという中、輸出用機械とともにトップクラスの成長産業として注目を集めているのが観光分野で、特にインバウンド消費はまだまだ伸びしろが大きいという。
次に説明したのは、横浜市の課題だ。まず観光面では、約8割が日帰り観光で、訪日外国人の宿泊者数が全国の伸び率より低いという課題を抱える。また、自治体の課題としては、2019年をピークに横浜市の人口は減少に転じており、45年後には生産年齢人口がいまの2/3にまで落ち込むという。一方で高齢化により、老年人口は増大し、それとともに社会保障費は膨らむことになる。
特にインフラの維持・保守は喫緊の課題になるという。横浜市が管理している道路は7600kmにおよんでおり、高度成長時代のベッドタウン化とともに増やした小中学校がちょうど立て替えの時期がさしかかっている。また、昨今の台風のような大規模な災害に対する対応も重要だ。
しかし、これを支える横浜市の財政は厳しく、人口減少によって税収の半分を占める個人市民税が減るのに加え、上場企業が少なく、法人税が23区の1/14ということもあり、法人税の増加も難しい。将来を安心・安全を担う自治体としては、財政面で大きな危機が訪れているのが現状だ。
伸びしろのある観光・MICE領域の中心にIR
こうした中、税収の増加や経済活性化に資する施策の1つが統合型リゾート(IR)だ。平原氏が強調したのは、IRはあくまで1つの施策に過ぎないということ。「横浜市はなにもIRに頼ろうとしているのではありません。中小企業の振興や災害に強い街作り、観光・MICE都市という施策と同じレベルでIRが位置づけられています」と平原氏は語る。横浜市が求めるIRはシンガポールのIRをモデルとし、MICE、ホテル、レストラン、ショッピングモール、エンターテインメント施設、そしてカジノを組み合わせた施設を作るという計画。敷地は47haにおよぶ山下ふ頭で、羽田空港から首都高湾岸線で30分かからず着くという。平原氏は、横浜に存在しない5つ星ホテルまで含めた各種宿泊施設や、市民が無料で楽しめるオープンスペースなどにも高い期待を寄せた。「日本と言えば、横浜。横浜のIRに行ってみたいと思ってもらえるようにしたい」と語る。
経済効果としては、観光振興としてまず訪問者数2000~4000万人/年、IR区域内での消費額は4500~7400億円を見込む。市内企業への発注の促進や観光客の回遊により、地域経済への振興も見込まれ、経済波及効果で7500億~1兆2000億円(建築時)、間接効果まで含めた雇用創出効果は7万7000~12万7000人を見込んでいる。当然、市の財政にも大きなメリットがあり、820億~1200億円の税収増が想定されている。
平原氏は、横浜でのIRの実現に向けた3つの考えとして、「横浜市民が誰でも楽しめる世界水準のリゾート施設を実現」「市内の観光・産業のあらゆる資源を活用して、地域一体型の観光振興を図り、経済活性化に貢献」「依存症・治安対策、事業継続など、徹底したリスク対策」を挙げる。
事実がねじ曲げられたIR記事への懸念
多くの市民が懸念している依存症対策については、マイナンバーカードによる入場制限や6000円の入場料、本人や家族の申告による入場制限があり、カジノ内でのATMや貸金業は不可となっている。「依存症対策はいままで十分ではなかった」とのことで、予防策も強化し、犯罪予防に関しても事業者・警察・自治体が連携して予防に当たるという。今後の進め方については、昨年度に発表された実施方針に基づき今年度中には事業者公募と選定を実施。選定事業者と市で作成した区域整備計画を2021年度に提出し、国が決める3つの地域に残りたいという。また、現在は各区で市民説明会を開催しており、現在10区まで終えている。
今回の平原氏の内容は、おおむね横浜市が公式な説明の最新版という印象だったが、最後にアピールしたのは、まだまだ反対意見の多い市民に向けた正しい情報の重要性だ。平原氏は、「IRはどこに行くにもカジノを通らなければならない」「地元には還元がない」「カジノでATMやカジノでお金が引き出せる」などと書かれたIR関連の記事について、あまりにも事実がねじ曲げられていると批判する。
「『飲む・打つ・買う』がセットで、売春婦がいるなんて、あまりにも突拍子もない意見。こうした事実があれば、自治体やカジノ管理委員会がきっちり管理して、免許を取り消すこともできる。世界に認めていただける健全なIR施設を横浜に作っていく覚悟」と語り、IR誘致の思いをアピールした。
講演中、ヘルメットを付けた参加者が登壇者の前で「カジノは要らない」と抗議し、係員に促されて退場する場面もあった。
■関連サイト
IR(統合型リゾート)(横浜市)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/