稼働率90%以上を維持するマリーナベイ・サンズのMICEを見る

二上葉子

 日本型IRのお手本とも言えるシンガポールのマリーナベイ・サンズ。制限範囲内のわずかな面積であるカジノフロアに対し、敷地の大きな割合を占めるのは国際会議やイベントを開催するMICE施設だ。


年間3600件のイベントを開催 供給が間に合わず増床へ

 マリーナベイ・サンズでのMICEの延床面積は約12万㎡(東京ドーム約2.5個分)で、最大4万5000人が収容できる規模だという。日本最大級の展示施設である東京ビッグサイトの延床面積31万7000㎡に比べると、それでもやや小さいようにも思えるが、アジアのハブとしてのロケーションを活かし、国際会議や国際的展示イベントなど年間3600件のイベントが開催される。なにより施設の稼働率は90%以上を維持しているというのが驚きだ。

MICEのボールルームでは2,000人規模の着席パーティーの準備がおこなわれていた

 取材で訪れた日もちょうどグローバル企業の国際的イベントが開催されていたが、複数フロア貸し切っておこなう大型イベントは、すでに3年先まで予約が埋まっているという。シンガポールが国際イベント誘致に成功している理由は、世界につながるアクセスインフラ、公用語が英語であることなどさまざまな要因がああるが、ラスベガスにおけるMICE先駆者のサンズのノウハウも大きいようだ。

マリーナベイ・サンズ 国際会議場・展示場施設担当バイスプレジデント オン・ウィー・ミン氏

 マリーナベイ・サンズの国際会議場・展示場施設担当バイスプレジデントのオン・ウィー・ミン氏は、「ワンストップのソリューションを提供できることが強み」と語る。国際会議の参加者に会議以外の時間を楽しく過ごしてもらうための要素、具体的には洗練されたホテルやレストラン、ショッピングモール、エンターテイメント施設などをIR内に揃えているというわけだ。そして「グローバル企業との強力なビジネスネットワークを持ち、彼らの望むベストなプランを提供できる」ことが重要だと言う。

 MICEの需要に供給が追い付かないため、マリーナベイ・サンズでは次の追加投資でMICEの増床を決定した。IRにおいて、それだけMICE事業がポテンシャルを秘めているということだ。一般的にビジネス客の顧客単価は一般の観光客より高い傾向にあるが、グローバルなビジネス客をMICEによって確実に呼び込むことは日本型IR成功のカギであり、事業者の手腕が試される部分と言ってよいだろう。

 IRはカジノ、MICE、宿泊、レストラン、エンターテイメント、ショッピングなど複合的な要素を一つにした新たな巨大産業である。シンガポール型IRの成功事例を踏まえながら、どのように日本に適したIRにしていくのか。マリーナベイ・サンズでの挑戦は、私たちにさまざまなヒントを与えてくれる。

■関連サイト
マリーナベイ・サンズ
https://jp.marinabaysands.com/