ホテル業界の知日派エキスパートに聞いたボストンIR立ち上げまでの道

JaIR編集委員・玉置泰紀

 ウィン・リゾーツの最新IR「アンコール・ボストンハーバー」で11月中旬に実施されたプレスカンファレンスで、ホテル業界のエキスパート、ブライアン・ガルブランツ社長に話を聞いた。ザ・リッツ・カールトン大阪の立ち上げに携わったことのある知日派のガルブランツ氏にボストンのIRの立ち上げやホテルとの違い、そしてチャレンジを続けてきた原動力について聞いた。


ブライアン・ガルブランツ社長


IRとホテルの立ち上げ、違うところと共通しているところ


 ガルブランツ氏は、ザ・リッツ・カールトンで20年間働いていた経験があり、これまでに23回の立ち上げに関わってきた。1997年5月に開業したザ・リッツ・カールトン大阪の立ち上げメンバーでもあり、奥様も日本人だという。(以下、敬称略)

玉置:事業立ち上げのプロとして、今回のボストンでのIR立ち上げについて教えてください。

ガルブランツ:まずロケーション探しからでした。十分な広さと建物が建てられる敷地が必要です。しかも、ボストンはアメリカ最古の都市で、住民のプライドが高い街です。絶対条件ではありませんが、可能ならウォーターフロントで開業したいと思っていました。

しかし、おいそれと15ヘクタールを見つけられません。そんなときに、ボストンに隣接するこのエバレット市のウォーターフロントの再開発プロジェクトが立ち上がり、両者の思惑が一致したわけです。

玉置:IRとホテルの立ち上げでは、どのような違いがあるのでしょうか?

ガルブランツ:品質やカルチャーは変わりません。妥協しないことも同じです。一番違うのは、スケールでしょう。たとえば、ここに来る前のラスベガスのウィン・リゾーツは1万2000人の従業員がいますし、ボストンでも5000人弱です。その点、ホテルは普通数百人ですし、リッツでも900人くらい。横浜は1万6000人とも言われているわけで、スケールがまったく違いますね(笑)。


ジェフ・クーンズのポパイ。2014年に2800万ドル(30億円)で購入。1トンのステンレス鋼

玉置:反対派の人たちへの交渉ではどんな苦労がありましたか?

ガルブランツ:やはり知ってもらうことですね。あらゆるレベルでの情報交換です。人間は知らないことを恐れます。しかし、変化しなければ、改良されないということを伝えていきました。

たとえば、この周辺の水の品質は以前は最低レベルのCマイナスだったのですが、いまやAマイナスになりました。野生動物も復活してきています。こういう具体的なビジョンを示さなければいけません。もちろん、できあがったものを見ないと納得しない人いらっしゃいますから、全体としてはスローチェンジを覚悟するしかないですね。

玉置:立ち上げの苦しさになぜ、これほど多く挑戦してきたのでしょうか?

ガルブランツ:言葉にするのは難しいのですが、立ち上げに向かってのスタッフの団結感、オープニング寸前で盛り上がってくるプライドがすごい幸せなのです。ある一定の目標に向かって努力をし、ある瞬間になると実る。この実感を幹部だけでなく、全てのスタッフ、そして地域住民の方々も共有する素晴らしさですね。

歴史のある大都市部で初のIR開業に向けての開発の話は興味深いものがあった。

■関連サイト
ウィン・リゾーツ
http://www.wynnjapan.com/