ボストンの最新IR事例を披露したウィン・リゾーツ

大谷イビサ(JaIR編集部)

 [関西]統合型リゾート産業展のIRオペレーター講演の最後に登壇したのは、ラスベガス、マカオ、パリなどにIRを持ち、ハイクオリティなリゾートをリードするウィン・リゾーツ。ウィン・リゾーツ・デベロップメント・ジャパンのクリス・ゴードン代表は、ボストンの最新IR事例を持ち出し、大阪でのIR計画をアピールした。


ウィン・リゾーツ・デベロップメント・ジャパンのクリス・ゴードン代表
 

ボストンの事例を元に「インフラ投資ももちろんやる」

 長年にわたってIRを展開するウィン・リゾーツ(Wynn Resorts)は、ラスベガスやマカオ、パリなどにIRを展開しており、6月にはマサチューセッツ州のボストンに巨大なIRをオープンさせた。ハイエンドマーケットに強みを持っており、2019年はフォーブス誌においては世界のラグジュアリーホテルの中でもっとも高い評価を得たという。「日本ではハイクオリティなリゾートが求められているので、日本にはわれわれのスタイルを持ち込みたい」とゴードン氏は語る。

 こうしたハイクオリティな都市型リゾートとして例示したいのが、開設したばかりのボストンの「アンコール・ボストン・ハーバー」だ。「リゾートホテルのほとんどは砂漠の真ん中やリゾート地にあるのだが、ボストンのIRは大阪と同じく都市の中にある」とゴードン氏は語る。元々は汚染の進んだ工場の跡地で長年放置されていたが、IR誘致を決めたことで大きな経済効果が予想される。敷地は徹底的なクリーンアップが施され、民間の資金で高速道路や鉄道、港湾の整備も行なわれた。ゴードン氏は夢洲を念頭に、「まさにこれから大阪がやろうとしていること。インフラ投資ももちろんやる」と語る。


完成後のアンコール・ボストン・ハーバー

 IRにおける日本市場のポテンシャルは大きい。経済全体の成長はゆるやかだが、観光領域は継続的に好況であり、政府自体も訪日観光客を2020年には4000万人、2030年までには6000万人に増やす目標。2018年を見れば、マカオだけでも3580万人、ラスベガスは4210万人に上っており、日本のポテンシャルは高いという。シンガポールでは、IR進出前は3.2%だった訪問者数の年間成長率がIR進出後は6%に跳ね上がった。IR貢献度はすでに実証済みというわけだ。ゴードン氏は、「IRこそが観光客を増やすよいアプローチであることが証明された」と語る。
 

デザイン、アート、MICE施設の実績をアピール

 ウィンリゾートとしてゴードン氏がまずアピールしたのは「卓越したデザイン」だ。200名のインハウスデザイナーを抱えており、1つ1つのIR施設にフォーカスされたデザインを行なっている。「5つ星もデザインもよさがあったからこそ。どういったデザインが日本にふさわしいのか、建築家や専門家の意見を得て考えていく。あくまで日本にあったものを作っていく」と語る。


ハイクオリティなデザインへのこだわり

 また、エンタテインメント、フード、ナイトカテゴリなどでのイノベーション、ラグジュアリーなホテル、リピーターを抱える高品質なMICE施設のほか、ボストンや大阪を意識したウォーターフロントでの実績も強調された。「大阪はまさに白紙であり、ウォーターフロントも、船によるアクセスも作ることができる。一般の市民にも楽しんでもらえる公共スペースも用意します。自然や景観を楽しむという要素を日本のIRでも取り入れていきたい」(ゴードン氏)。さらにアートに関しても熱心で、所属するキュレーターがパブリックアートやギャラリーの展示内容を定期的に入れ替えることで、訪問するたびに新しい体験を得られるという。

 IRに向けた投資についても説明された。ウィン・リゾーツは4施設で年間27億ドル(2970億円)を総支出している。内訳はラスベガスに11億ドル(1210億円)、マカオに5億ドル(550億円)、コタイに6億ドル(660億円)、そしてボストンには5億3000万ドル(583億円)だ。日本では9億4000万~14億ドル(1034億から1540億円)の投資を見込んでおり、地元経済にも大きな好影響があるという。

ウィン・リゾーツの4施設の年間総支出

 ゴードン氏は、「ランドリー、商品、セキュリティなどすべて地元から調達される。地元のスモールビジネスと仕事をしていきたい」と語る。実際、ウィンラスベガスでは広告・マーケティング、雇用者手当、飲食、施設、ナイトライフ、家具・什器、、消耗品、外注、テクノロジーなど幅広いカテゴリで、2247ものサプライヤーを抱えているという。

 継続的な投資も進めている。ウィンラスベガスではMICE施設の増築が行なわれており、ノンゲーミング領域の投資を拡大している。最新のMICE施設は84万㎡を超えており、ホテルの稼働率増加やリピーター利用の拡大に寄与する見込み。ゴードン氏は、「最大だけではなく、ベストでなければ、お客様はリピートしてくれない」と語る。

 さらにゴードン氏はストリップに面したショッピングセンターのウィン・プラザのほか、14年間続いている人気ショーの「ル・レーブ」のリメイク、ウィン・マカオのリニューアルなど再投資中のプロジェクトを紹介。「いつもリニューアルしている。日本でも同じことをしていきたいと考えている」(ゴードン氏)とアピールした。
 

世界最高レベルの「責任あるゲーミング」を開発する

 オープンしたばかりのアンコール・ボストン・ハーバーでは15年の運営許可期間中、地元や周辺コミュニティに約5億7500億円(約623億5000万円)を投じる予定。また、教育や人材育成、観光&交通、芸術&文化、スポーツ&エンタテインメントなどありとあらゆる団体と連携し、カジノ税の収益が幅広い基金やプログラムに配分されている。

 従業員数も披露された。ラスベガスは1万2000人、マカオは5900人、コタイは7100人、ボストンは4500人が雇用されている。ボストンでは450を超える職種の求人5500件に対し、8万人以上の応募があったとのこと。日本に「ウィン・ジャパン」ができた場合も、1万1000~1万6700人が雇用される見込みだという。また、地域コミュニティとの共存・共栄もアピールされた。ボランティア活動やチャリティへの寄付、イベントのスポンサーという形で地域を支援しており、2018年世界のウィン従業員が費やしたボランティアの総時間がおよそ4万6500時間にのぼるとのこと。
 
 ギャンブル依存症などへの対策についても説明した。ボストンのIRがあるマサチューセッツ州はゲーミングの運営に対して非常に厳しい姿勢を持つ自治体。これに対してウィンリゾーツは世界的にも有名なネバダ大学ラスベガス校の国際ゲーミング研究所(UNLV)や日本の専門家とも連携し、世界最高レベルの「責任あるゲーミング」プログラムを開発するという。


「責任あるゲーミングプログラム」の開発

 最後、ゴードン氏は「有言実行」という言葉を出し、「前向きな開発」「プログラムの充実」「健全な財政運営」「社会に対する責任」「経済への貢献」「環境保護への取り組み」などをポイントを挙げた。

■関連サイト
ウィン・リゾーツ
http://www.wynnjapan.com/