横浜市がIR誘致を正式発表 背景に将来への強い危機感

大谷イビサ(JaIR編集部)

2019年8月22日、横浜市の林文子市長は定例会見において統合型リゾート(IR)の誘致を正式に発表した。IR整備法では、全国で3箇所がIRの整備区域として選定されるが、関東圏の正式な立候補は初めてで、自治体間での争いはますます激しくなるとみられる。
 

これまでにない経済的・社会的効果を見込む


IR誘致を決断した背景として、林市長は「横浜の将来に向けた強い危機感」を挙げた。横浜市の人口構成を披露した林市長は、2019年をピークに人口は減少し、生産人口は2065年に73万人減少し、老年人口は今から15万人増加すると説明。社会保障費が市の財政を圧迫する中、子育て・医療・福祉・教育などを支えて行くための方策として、IRについて調査と検討を重ねてきたという。

これに対して、IRオペレーターからは日本最大級のMICE施設、ラグジュアリーホテル、エンタテインメント向けのアリーナ、家族で楽しめるアトラクションなどを含む統合型リゾートの情報提供が行なわれ、「国内外の観光客だけではなく、横浜市民の方も楽しんでいただける統合型リゾート実現の可能性が示された」(林市長)という。

横浜でIRが実現した場合、インバウンドを含むIRへの訪問者数は年間2000万人~4000万人、消費額も年間4500万人~7400億円が見込まれるという。また、経済波及効果も建設時で年間7500億円~1兆2000億円、運営時に6300億~1兆円。地方自治体への増収効果も820億円~1200億円/年となり、「これまでにない経済的・社会的効果を見込んでいます」(林市長)という。

IRの構成要素であるカジノに関しては、カジノ規制が盛り込まれたIR整備法、ギャンブル等依存症対策基本法、カジノを行なう区域の上限をIR施設の床面積の3%にとどめるIR整備基本法、ギャンブル等依存症対策推進計画などに加え、IRオペレーターによるマイナンバーカードや顔認証による厳格な入場管理、本人・家族による利用制限、事業者・自治体・行政が連携した地域環境対策などを強化されている点を強調。「あらゆる関係者が協力することで、依存症の方を増やさないに取り組む環境や治安強化などへの対策を強化する環境が整ってきた」(林市長)と語り、今後も市民に向けて説明を続け、IRへの理解を深めていくという。

立地場所は情報提供を行なった12の事業者すべてが想定する山下埠頭と発表された。「広大でシンボル性の高い立地、利便性の高い交通アクセス、みなとみらい21地区から続く魅力的なウォーターフロントの景観など、都市型リゾートの立地場所として非常に高いポテンシャルを有している。事業者もこちらでぜひやりたいとおっしゃっており、横浜市としてもこの地が最適と考えている」と林氏はアピールした。

林氏は、「横浜市の将来、特に20年、30年先を見据えなければならない。私たちの子どもの世代にも成長・発展を続けていくためには、横浜においてIRを実現する必要があるという結論に達した」と語る。今後は国の整備地区認定を受けるための予算を議会に提出していくという。

「IRの実現に向けて」について(記者発表資料)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/seisaku/2019/0822ir.html

IR(統合型リゾート)等新たな戦略的都市づくりの検討(横浜市)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/ir.html