「日経 統合型リゾートフォーラム」で聞いた大阪のIRの最新動向

JaIR編集委員・玉置泰紀

 8月8日、北梅田のザ・リッツ・カールトン大阪で開催された「日経 統合型リゾートフォーラム」。キーマン続々の登場人物の豪華さもさることながら、参議院選挙の影響で、政府の対応が当初予定より遅れていたのが、ようやく目処が立ちつつある状況での開催とあって、その内容に注目が集まった。

松井一郎・大阪市長(中央)、吉村洋文・大阪府知事(右)登壇


佳境を迎えるRFC 万博を控え、タイトロープな大阪のIR

 大阪のRFC作成も佳境を向かえ、締め切りが近づいている。ここで言うRFCとは、「(仮称)大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業」の事業コンセプトを募集の略称。大阪府・市の最終的な公募であるRFP(“実施方針の策定並びに特定複合観光施設を設置及び運営する事業を行う民間事業者の公募・選定”)に向けての各事業者からの事業コンセプトの募集であり、RFCを提出しなければ、RFPに応募できないというわけではないが、このRFCがRFPの選定で重要な役割を果たすのでは、というのは衆目の一致する見方だ。提出は8月いっぱいとされている。そして、この8~10月にかけて、提案者と大阪府・市は対話をするということになっている。

 RFCには最終的に7社が応募し発表されている。

参加登録者(五十音順)
  ・ウィン・リゾーツ・リミテッド
  ・MGMリゾーツ・インターナショナル/オリックス株式会社
  ・ゲンティン・シンガポール・リミテッド
  ・メルコリゾーツ&エンターテインメント リミテッド
  ・ラスベガス・サンズ・コーポレーション
  ※2者は名称非公表を希望

 そして、今回のフォーラムには、日本MGMリゾーツ、メルコリゾーツ&エンターテインメントジャパン、ウィン・リゾーツ・リミテッドが参加しており、大阪市の松井市長、大阪府の吉村知事も参加するとなると注目されるのは当然といえよう。

 統合型リゾートは、まずは全国で最大3箇所が選ばれるのだが、各自治体がそれぞれの動きをする中、大阪府・市は早い時期から積極的に動いている。開業予定地の人工島「夢洲」での2025年大阪・関西万博も決まり、選定される可能性は極めて高いとされている。しかし、万博が開催される2025年5月3日~11月3日というスケジュールは強みでもあり、逆に制約条件にもなっている。大阪府・市は、万博開業前にIRを開業すると常に言っているが、政府の進行が当初よりも遅れてきている。この”万博前の開業”が極めてタイトロープな状態になっているわけだ。

 今回のフォーラムの冒頭は、自民党幹事長代行の萩生田光一衆議院議員の基調講演で、その中で、「万博が開催される前にはIRがオープンしていることが好ましい」と話し、万博開催中に隣で工事が行われていることは考えられないと指摘をした。交通インフラも課題で、現状の地下鉄延伸でつなぐ中、万博の来場者と工事車両を同時にさばけないだろうという、意味もあるようだ。特に、万博の来場者も泊まれるホテルはオープンしていてほしいということで、一部オープンでもということも萩生田議員は話したが、現状では一括オープンという決まりを変えない限り難しい。

 萩生田議員は党の立場で政府には進行の加速を働きかけると強く語り、秋には必ず基本方針を定め、カジノ管理委員会も速やかに設置し、パブリックコメントも早期に開始するという、来場者全員が気にしているポイントを見通しとして語った。大阪府・市でのIR開業の最大のポイントがいきなり出た形だ。


知事・市長のリーダーシップで遅延なく進める

 特別パネルセッションは、松井一郎・大阪市長と吉村洋文・大阪府知事が登壇。吉村知事の「公募、RFPは秋冬には必ず始める、RFCはすでに進めている」という発言は、進行状況を踏まえた発言になる。また、工事に関する行政手続きの簡素化、お役所仕事ではなく、知事市長のリーダーシップで工事の調整も含めコミットしていくという意思表示も出た。松井市長からは「工事調整は副市長をトップに遅滞なく進められるようにしていく」と語る一方、「民間の知恵も絞ってほしい」というエクスキューズも。そして、二人とも万博開業前のIR開業は必須であると繰り返した。

 また、アクセスの問題も取り上げられた。現状、夢洲へのアクセス手段は地下鉄の延伸が決定しているが、吉村知事からは夢洲の北岸の護岸工事は決定しており、船をつけられるようにするという話が出た。これにより、関西国際空港から船で直接IRにリーチすることも可能になる。たとえば夢洲の北側にも鉄道を伸ばして、JRや私鉄につなげるという必要性も指摘された。ちなみにアクセスの話題は、阪急阪神ホールディングスの角和夫CEOが登壇したパネルセッションで、高速道路、鉄道、空港といったインフラの未来像を地図で見せながら解説し、夢洲を含んだ循環ルートの可能性を語った。

 このほかにも、万博と連動するスマートシティの可能性など、他の候補地と比べても相当具体的な議論が多いフォーラムだったが、神奈川新聞の8月19日の「「白紙」一転 横浜市がIR誘致へ 林市長が近く表明」の記事から、一気に横浜関連の記事が各メディアから並び、動向が注視されていた横浜の動きの加速とともに、先頭を走っているとされてきた大阪府・市を含め、全国の各候補地、それぞれの候補地でしのぎを削っている事業者も含め新たなフェーズに入ってきたといえる。いずれにせよ、10月をめどに召集される臨時国会でのカジノ管理委員会の設置、基本方針発表などが要注目だ。

関連サイト
「日経 統合型リゾートフォーラム」
https://www.global-nikkei.com/nirf19/