大阪の訪日観光客が推計1140万人に 心斎橋・難波エリアが牽引か

JaIR編集部

 CBREは8月1日、特別レポート「今後の大阪の不動産市場の行方~2030年に向けて~」を発表した。今後、大阪の未来を展望し、大阪の不動産市場の魅力を考察したもの。

 かつて大阪オフィス市場の中心は、淀屋橋~本町にかけての御堂筋沿いだったが、過去20年程度の時間を経て、梅田にシフトしてきた。向こう10年、このトレンドはさらに加速する見込みだという。

 今後、2022年から2025年にかけて、大阪駅(梅田駅)周辺では、3つの大型プロジェクトの竣工が予定されている。供給されるオフィス面積は7.8万坪で、2018年のストックに対して33%の増加が見込める。結果、大阪全体の賃貸オフィスビルのストックに占める梅田の割合は、2018年末時点の15%から、向こう10年間で20%程度にまで上昇すると推計できる。

 一方、心斎橋は大阪の商業地の中心として従前から賑わいのある街だったが、近年はインバウンドにも人気のある街として、海外でも注目度が高まっているという。心斎橋への新規出店ニーズも一段と増加しており、今後は心斎橋の周辺部にまで拡大すると考えられるとのこと。

 大阪では、向こう10年の間に夢洲(ゆめしま)という新たな事業用不動産の集積地が誕生する。夢洲ではすでに万博開催が決定しており、統合型リゾート(IR)の最有力候補地の1つとされているという。IR誘致が決定すれば、オフィスを中心とする梅田と、商業を中心とする心斎橋・難波との相乗効果も期待される。夢洲が大阪における新たな事業用不動産の集積地になると考えられるとした。

 大阪への訪日外客数は、インバウンドの増加が本格化する前の2011年には140万人だったが、2018年は推計1140万人と8倍になった。増加の牽引役となったのが心斎橋・難波エリアだという。

 旅行者の増加により、リテールとホテルセクターには直接の恩恵がもたらされるが、オフィスセクターにも需要増加が期待できる。大阪市の試算によると、建設を除く雇用だけで、年間8~13万人の創出効果が見込めるという。そのほか、不動産業、ゲームや通信・ソフトウェア関連業、流通・サービス業でも、ビジネス機会が増えると考えられるとした。

 CBREリサーチのアソシエイトディレクター山口武氏は「向こう10年、大阪は大きく変貌する。オフィスを中心とするキタ(梅田)と、商業を中心とするミナミ(心斎橋・難波)は、大型プロジェクトとともに街の特性をさらに強めていくだろう。これにMICEや商業、観光拠点となる二シ(夢洲)が加わることで、大阪の事業用不動産市場のさらなる発展・成長を促すだろう」と述べている。