サンズ20年第2四半期は減益 「サンズの心は日本に戻っていくため開いている」

JaIR編集委員・玉置泰紀

 ラスベガス・サンズは2020年度の第2四半期の結果を7月22日に発表した。ラスベガス・サンズ・コーポレーションの総売上高は昨年同期比で97.1%減、サンズ・チャイナ・リミテッドは同じく純収益合計で98.1%減を記録し、コロナ禍の大きな影響を受けているが、ラスベガス・サンズの会長兼最高経営責任者のシェルドン・アデルソン氏は日本について聞かれ、GGRAsiaによると「我慢できなかった負の規制が多すぎた。彼らがそれを変更した場合、私たちの心は戻っていくために開いています」と答えた、という。

シンガポールのマリーナベイ・サンズ

厳しい第2四半期の数字。2021年まで水晶玉を見ない(未来予測をしない)

 ラスベガス・サンズの公式ページによると、ラスベガス・サンズ・コーポレーションの純売上高は、前年同期比97.1%減の9,800万ドル(約103億円)。営業損失は9億2,200万ドル(約972億円)(前年同期は8億8,400万ドル)。2020年第2四半期の純損失は9億8,500万ドル(約1,038億円)で、2019年第2四半期の純利益は11億1,000万ドル(約1,170億円)だった。

 一方、サンズ・チャイナ・リミテッド(SCL)の連結決算は、GAAP(米国会計基準)ベースで、SCLの純収益合計は、2019年第2四半期と比較して98.1%減少、4,000万ドル(約42億円)に。SCLの純損失は5億4,900万ドル(約579億円)で、2019年第2四半期の純利益は5億1,100万ドル(約539億円)だった。

 非常に厳しい数字だが、アデルソン氏は
「各市場でのCovid-19パンデミックからの回復プロセスの初期段階が現在進行中であることを嬉しく思います」
「この復興期における私たちの最優先事項は、チームメンバーをサポートし、マカオ、シンガポール、ラスベガスの各地域社会で困っている人々を支援するという私たちの深いコミットメントです。 私たちは、市場全体での旅行および観光支出の最終的な回復、ならびに将来の成長見通しについて楽観的です。幸運にも私たちの財務力により、マカオとシンガポールの両方で以前に発表された設備投資プログラムを引き続き実行できると同時に、新しい市場での成長機会を追求し続けることができます」
 と、前向きなコメントをしている。

 ラスベガス・レビュー・ジャーナルなどの報道によると、ロバート・ゴールドスタイン社長兼最高執行責任者は、ラスベガス、マカオ、シンガポールの各市場の中で、ラスベガスが最も悪いといい、ワクチンが開発され、配備されるまでは変化がないと考えている。

「航空輸送は以前の40%程度になっている」
「その40%のうち、飛行機の搭乗率は以前よりもはるかに低くなっている 」
「我々はここで痛い目に遭っている。先を見る限り、私は2021年までは水晶玉を見ない(未来予測をしない)」
「我々は2020年の残りの期間、コンベンションおよびバンケットビジネスが「ゼロ」になると予想している」
と、厳しい状況を率直に話している。

 3つの市場のうち、航空機のトラフィックに最も依存しているのはラスベガス。ゴールドスタイン氏によると、マカオ市場のうち、マカオまたは香港の空港に飛ぶのは約10%にすぎない。ラスベガスでは、市場の約45%が飛行機で移動する人々に依存している。
 
 この会見の中で日本進出からの撤退についても質問されたが、ゴールドスタイン氏は
「シェルドンとここにいるチーム以上に日本での活動を望んでいた者はいませんでした」
「私たちは日本に非常に強気でした。多くの時間とお金を費やし、希望を持っていました。しかし、日本の環境は、この会社が求めるリターンを得るための投資を行うのには適していなかった」
 と、日本からの撤退を望んでいたわけではなかった、という。

 しかし、アデルソン氏は
「日本政府が公布した規制は、我々が必要とするような投資を誘致するのには適していなかった。彼らはゲーミングで、外国人の勝者から所得税を源泉徴収するという話をしていた。つまり、他国からプレイヤーが入ってきて勝った場合、政府は運営者が日本政府に支払う税金を源泉徴収することを望んでいるということだ」
 と、税制への不満を明かした。

 また、ゴールドスタイン氏は、日本の規制環境は
「この会社がリターンの面で望むような投資を行うのには適していなかった」
「私たちはそれを成功させることができませんでした。私たちは確かに努力しましたが...投資家をもっと歓迎する構造であればよかったのですが、そうではありませんでした」
 とも、話している。

 とは言え、この会見の中で、アデルソン氏が「心は戻ってくるために開いている」と語った意味は大きい。マーケティングコンサルタント会社のベイ・シティ・ベンチャーズ・リミテッドは今月初め、「ラスベガス・サンズが日本への投資を永久に排除する可能性は低い」と指摘し、「ビジネス的に意味があるならば、必ず戻ってくるだろう。彼らは日本を離れたわけではない...永遠には」とリポートしている。


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・ラスベガス・サンズ 2020.7.22
ラスベガスサンズ、2020年第2四半期の結果を報告
https://investor.sands.com/press-releases/press-release-details/2020/Las-Vegas-Sands-Reports-Second-Quarter-2020-Results/default.aspx

・GGRAsia 2020.7.24
LVS open to rethink on Japan if rules change: CEO
http://www.ggrasia.com/lvs-open-to-rethink-on-japan-if-rules-change-ceo/

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