シルク・ドゥ・ソレイユに対してカナダ・ケベック州が最大2億ドルの融資を誓約

二上葉子

 新型コロナウィルス感染拡大の影響により経営不振に陥っているシルク・ドゥ・ソレイユについて、5月1日に「ラスベガスでのエンターテインメント『シルク・ドゥ・ソレイユ』に未来はあるのか?」のレポート記事を配信したが、続報として、カナダ・ケベック州や主要株主からの融資に関する現地報道があった。シルク・ドゥ・ソレイユの最新動向をお伝えする。
 

ケベック州政府が融資を誓約、本社がケベック州に残ることが条件

 ザ・カナディアン・プレスの報道によると、現地時間5月26日、ケベック州政府は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で経営が麻痺したままのシルク・ドゥ・ソレイユを支援するために、最大 2 億ドル(約214億円)の融資を約束し、救済に乗り出した。

Quebec pledges up to $200M US to support Cirque du Soleil
By The Canadian Press May 26, 2020
https://www.cbc.ca/news/entertainment/quebec-govt-cirque-soleil-support-covid-coronavirus-1.5585509

 ケベック州のピエール・フィッツギボン経済相の説明では、ケベック州は、ケベック州投資公社(Investissement Québec)とシルク・ドゥ・ソレイユの主要株主であるアメリカ・テキサス州のTPGキャピタル、中国の投資会社である復星国際(Fosun)、ケベック預金投資年金ファンド(Caisse de depot et placement du Quebec)の3社との間の合意に基づき、同社の債権者になるという。取引の条件は、同社の本社がケベック州に残り、上級役員がそこに居住しなければならないことである。フィッツギボン経済相は、株主が株式を売却することを決定した場合には、ケベック州政府も同社を買収するオプションを持つことを示唆した。

 ラスベガス・レビュー・ジャーナルによると、シルク・ドゥ・ソレイユはケベック州の融資誓約の発表を受け、声明で以下のように答えた。

「当社の資本再建プロセスの一環である本日の発表を歓迎している。ケベック州投資公社と現株主によるコンソーシアムが示した当社への強い関心は、当社のブランドの強さと、シルク・ドゥ・ソレイユのケベックにおける遺産の維持が重要であることを大いに証明している」

Cirque du Soleil thrown a $200M lifeline by Quebec
By Las Vegas Review-Journal May 26, 2020
https://www.reviewjournal.com/entertainment/entertainment-columns/kats/cirque-du-soleil-thrown-a-200m-lifeline-by-quebec-2036105/

 一方、ケベック州の融資誓約が発表される2日前、5月25日のザ・カナディアン・プレスの報道によると、シルク・ドゥ・ソレイユの創設者ガイ・ラリベルテ氏は、5月24日夜に放送された人気番組で「オーナーシップチームを結成して会社を買い戻したい」と語った。 また、ラリベルテ氏はラジオカナダの番組でも「今日、私は購入プロセスに着手することを決定した」と語り、会社買収を表明していた。

Guy Laliberte wants to buy back Cirque du Soleil, keep headquarters in Montreal
By The Canadian Press May 25, 2020
https://montreal.ctvnews.ca/guy-laliberte-wants-to-buy-back-cirque-du-soleil-keep-headquarters-in-montreal-1.4953326

 創業者のラリベルテ氏は、「政府機関が会社を経営することを望んでいない」と述べ、「資金注入は、財務的な実行可能性を確保するためだけのもの」と発言。また同氏は、本社をモントリオールに残し、主にケベック人を雇用して会社を運営することを意図していると述べた。

 なお、ラリベルテ氏は、2019年2月に会社に残っていた10%をケベック預金投資年金ファンド(Caisse de depot et placement du Quebec)に売却。その際、金額は公表されなかったが、株式価値は1億ドル以上と推定されている。

 会社買収に関しては、モントリオールに本拠地を置くメディア大手のケベックオールも、同社の株式を購入する意向を表明したとの現地報道もある。

 また、シルク・ドゥ・ソレイユに対するケベック州の融資発表以前、同社は債権者に返済するため、主要株主であるTPGキャピタル、復星国際、ケベック預金投資年金ファンドから合計約7000万ドル(約75億円)の緊急の資金提供を受けている。今回、ケベック州の融資がおこなわれれば、同社の経営はようやく窮地を脱するだろう。

 

ラスベガスでのショー再開に向けて

 新型コロナウィルスの影響で、シルク・ドゥ・ソレイユは全世界で44のショーを中止し、約4,700人の従業員を一時解雇した。そのうち、ラスベガスで中止したショーは6つ、ラスベガスで働くスタッフの一時解雇は約1,300人であった。
 
 5月におこなわれたラスベガス・レビュー・ジャーナルのインタビューによると、シルク・ドゥ・ソレイユのダニエル・ラマールCEOは、ラスベガスでの同社の復活に向けた取り組みを強化したという。ラスベガスの状況について、「良いニュースとしては、当社のアーティスト、各ショーのキャスト、クルーの約100%がラスベガスに住んでいること」と語るラマール氏。「少なくともラスベガスでは、スタッフを世界中から集めて再編成する必要はない」と述べている。

1998年からラスベガスの専用劇場にて上演されている「O(オー)」

 ネバダ州のスティーブ・シソラック知事は5月22日に、ラスベガスでのカジノ再開は6月4日からを目指すと表明した。6月4日以降カジノが再開となり、また現時点でもIRの一部のレストランが限定的に再開しているが、シルク・ドゥ・ソレイユをはじめとしたエンターテイメント・ショーの再開はまだ先になると見られる。しかしながら、新型コロナウィルスによる閉塞状況からようやく一歩前進である。緊急融資により経営再建を図るシルク・ドゥ・ソレイユの次の一歩、ショーの再開が待たれる。