IR、みどり、LGBTQ、留学生まで 大阪観光局 溝畑理事長に聞いた反転攻勢の戦略 (2/3)

大谷イビサ(JaIR編集部)

スポーツ、観光ショーケース、環境についての展示会を開催


玉置:具体的ないくつかの施策について紹介してください。

溝畑:アフターコロナを見据えて、観光の「トップランナー」としてアジアや世界を牽引していく際、いくつか大阪の強みとしたい切り口があります。この切り口をアピールし、大阪が世界をリードするための施策を来年から再始動します。

その1つがスポーツです。スポーツの「見る」「する」「楽しむ」を実現するためにいろいろなモノが備わっているのが大阪です。この大阪で本格的なスポーツ博覧会を予定しています。

また、ツーリズムEXPOジャパンが2021年の開催が中止になったことを受け、全国の観光事業者のビジネスチャンスを確保するとともに、一般消費者の観光需要を喚起するために、「第1回 日本観光ショーケース in 大阪・関西」という展示会を開催します。国内観光に絞り、日本人にもっと国内旅行をしていただくことと、将来的なインバウンドの増加を目的にしています。日本中の観光地や民間事業者が出展します。将来的には万博やIRに来たお客さんを日本の各地にテーマごとに送客していくショーケースとしての機能を果たしていきたいので、まずは国内のネットワークをきちんと作る。その重要なプラットフォームの役割も目指し、この展示会を開催するわけです。

玉置:IRにおいても送客は大きなテーマですよね。

溝畑:実は送客はもともと大阪が得意なところだったと思うんです。たとえば江戸時代には、北前船という廻船の仕組みがあり、大阪で日本中のいいものを集めて、各地の消費者に提供してきた歴史があります。集客・送客のゲートウェイとなる機能の強い都市なので、この役割を改めてがんばって担っていきます。

環境をテーマにした「空気のみらいEXPO」も開催します。もともと大阪観光局は、次世代観光のテーマとして、「緑と空気」というグリーンツーリズムを掲げています。このテーマの起爆剤として今回の展示会を企画しました。二酸化炭素を出さないカーボンニュートラルよりも、排出された二炭化炭素を吸収するという点に主眼をおいた展示会になります。空調メーカーを中心としたビジネス的な展示はもちろんですが、啓発活動の一環として、一般向けのシンポジウムも開催する予定です。
 

一流の国際都市になるためにはLGBTQ対応や留学生の受け入れも重要


玉置:LGBTQの取り組みもスタートしていますね。

溝畑:東京五輪ではクエスチョンのついていたLGBTQ対応ですが、大阪・関西万博までにはしっかりやらなければならないと思っています。

9月には世界的なLGBTQツーリズム団体の総会開催誘致に向け、大阪観光局のスタッフがアトランタに行き、プレゼンテーションを行ないました。その結果、大阪は2024年大会の最有力な開催候補地として爆進中です。普及啓発にも力を入れており、関連イベントやセミナーを開催したり、コカコーラ様と提携して多様性促進を目的とする自動販売機を設置し、売上の一部をLGBTQ対策に使わせていただくなど、さまざまな活動を推進しています。

先日の大阪・関西万博の関係者会議でも、万博の時は大阪のみならず、関西全域がLGBTQの受け入れをしっかりやっていくべきいうお話しをさせてもらいました。LGBTQに関しては、トイレの問題も含めていろいろなハードルありますが、SDGsを掲げた万博のホストシティとしては必ず乗り越えなければなりません。

玉置:留学生の受け入れにフォーカスしているのも面白いですね。

溝畑:万博を開催する都市として、一流の国際都市は留学生をしっかり受け入れ、育て、そして人材として活用しています。もちろん、帰国しても、留学生は第二の故郷として大阪や日本の味方になってくれます。インバウンドの受け入れはもちろん大事ですが、4年間も日本にいてくれる留学生は、長期的・安定的なインバウンドとも言えますので、彼ら・彼女らのケアもしっかりしなければなりません。

これまで留学生支援は、行政、学校、企業などが別々に行なってきましたが、来日から滞在中、そして就労までの一貫したサポートが求められていたことを受け、大阪観光局が事務局となり、ステークホルダーを束ねた留学生支援コンソーシアム大阪という組織を立ち上げ、包括的な活動を推進中です。

玉置:具体的な施策について教えてください。

溝畑:たとえば、留学生を元気付けるために、去る11月には「留学生ウィーク」と名づけた8つのイベントからなる催しを開催し、フィナーレの「国際紅白歌合戦」では、みんなでWe Are The Worldを歌い、大いに盛り上がりました。また、12月には「外国人留学生EXPO」を開催し、留学生の課題を解決する企業・団体と留学生のマッチングを行なったほか、留学生同士の交流が少ないという問題に出会いを与え、相談に乗れる場を作り、留学生から高い満足度を得ることができました。テレビや新聞等でも広く報道され、注目を集めました。

今後も継続して開催し、留学生支援のムーブメントを全国に拡げたいと思っています。大阪がまずは先陣を切り、「面白い!うちもやろう」と思ってくれるほかの都市にどんどん派生し、日本全国を変えていく流れを起こしたい。大阪から日本を変えるんです。