【新型コロナのIRへの影響レポート】シンガポール 6月18日版

二上葉子

 世界中で新型コロナウィルスの影響を受けて、各国では出入国制限や都市封鎖がなされてきたが、徐々に制限の緩和が始まっている。日本型IRビジネスレポート(JaIR)では、統合型リゾート(IR)がある主要な地域の新型コロナウィルス関連の動向を配信。今回はシンガポールの最新状況をレポートする。

セントーサ島のビーチ
 

6月19日にフェーズ2に移行、社会活動全般が再開となるが、カジノは閉鎖のまま

 シンガポールでは、6月2日からサーキットブレーカー(部分的都市封鎖)が解除され、緩和の3段階のうち「フェーズ1」に移行した。フェーズ1では、労働力の3分の1が職場復帰したと見られる。

 これまでの感染者数の推移を整理すると、サーキットブレーカー解除前の6月1日段階では、新型コロナウィルス感染者は35,292人。そのうち外国人労働者の宿舎で発生したクラスターによる感染者は33,027人であった。フェーズ1に入り、国全体での新規感染者数は500人台から200人台へとやや減少しているものの、6月17日段階での感染者累計は41,216人(回復者31,938人、死亡者26人)。東南アジア全体で見れば、感染者数は比較的多いほうだ。

 シンガポール政府は6月15日に、制限措置をもう一段階緩和することを発表した。6月19日からフェーズ2に移行する。今までテイクアウトなどの限定的な再開にとどまっていたレストランや小売店も全面的な営業が可能となる。ショッピングモールやジム、公園やビーチなども再開され、5人以下の集会も認められる。フェーズ1緩和後も、市民の間に今後の見通しへの不透明感が漂っていたため、消費活動が停滞したままであったが、フェーズ2への移行で、消費がどこまで回復するか注目だ。

 しかしながら、フェーズ2では、カジノの再開はまだ認められておらず、バー、ナイトクラブ、カラオケ店、映画館、劇場、屋内外のアトラクションなどの「娯楽施設」は禁止である。シンガポール政府のメインサイトによると、「会議、展示会、コンサート、見本市などの大規模なイベントや会場」も引き続き禁止されると付け加えられている。具体的な公式発表はないが、カジノ再開はフェーズ3以降となる見込みだ。証券会社サンフォード・バーンスタイン社は、「シンガポールのカジノ閉鎖は少なくとも7月1日まで延長される」とレポートしている。

 シンガポールの2つのIRの再開状況だが、マリーナベイ・サンズ(MBS)は、6月19日よりショッピングモールの「ザ・ショップス」のテナントを順次再オープンすると発表した。テナントは、衛生面と安全面の対策を強化し、デザインを一新して再開する。テナント再開の初期段階では、社会的な距離の維持や人数制限を守るため、MBSのロイヤルティプログラムの会員だけがショッピングモールにアクセスできるとのことだ。MBSは会員情報と追跡システムが組み込まれた独自のエントリーシステムを開発、シンガポール政府のセーフエントリーシステムとも同期し、万全の体制で再開に臨む。しかし、MBSが運営する飲食店や、ホテル、カジノ、アート・サイエンス・ミュージアム、サンズ・エキスポ&コンベンションセンターなど、IR内の他のすべての施設やアトラクションは、引き続き閉鎖されたままである。

 もう1つのIR、ゲンティン・シンガポールが運営するリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)では、6月19日より一部レストランが再開する予定だ。フェーズ1ではデリバリー限定で再開していた店舗もあったが、さらにイートインが可能となる。しかし、RWSでも一部レストラン以外のIRの施設は閉鎖したままだ。RWSは政府の「SGクリーン」認定を受けた組織として、衛生管理に実践に取り組み、再開後は安全衛生プロトコルを強化すると発表している。

 シンガポールの入国制限に関しては、政府は6月15日に、これまで自国民や永住権保有者に限っていた入国を、6月18日から一部緩和すると発表した。就労ビザ保有者についても入国許可がおりるようになる見通しだ。就労ビザ保有者は入国前に人材開発省から事前承認を得ることを義務付ける。しかし、観光など短期滞在目的の入国は引き続き認められていない。入国・再入国が認められた者は、引き続き14日間の完全に外出を禁止する待機措置が義務付けられるが、政府専用施設での実施だけでなく、条件が揃えば自宅などでの実施も認められる。また、待機措置終了前にPCR検査の受診を義務付けられる。

 証券会社サンフォード・バーンスタイン社のレポートでは、カジノ再開の見通しが立っていないことから、シンガポールのカジノは「ゆっくりの回復」と表現され、2019年のGGR水準に戻るのは「2023年」になるだろうと予測されている。


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